最新記事

古代エジプト

全身が泥で覆われた古代エジプト時代のミイラが初めて発見される

2021年2月12日(金)17時30分
松岡由希子

砂や泥、藁からできた混合物で全身を覆われていた...... Sowada/PLOS ON

<全身を泥で覆われた約3200年前の古代エジプトのミイラを、豪マッコーリー大学の研究チームが発見した......>

豪マッコーリー大学の研究チームは、全身を泥で覆われた約3200年前の古代エジプトのミイラを初めて発見した。

26〜35歳の女性とみられるこのミイラは亜麻布で巻かれた後、砂や泥、藁からなる混合物で全身を覆われ、さらに亜麻布で包まれていた。

紀元前1207年頃にミイラ化された

新王国時代後期から第21王朝にわたる紀元前1294〜945年のミイラでは樹脂で覆われたものがいくつか確認されているが、泥に覆われたミイラが文献に記録されるのは、この研究チームが2021年2月3日にオープンアクセスジャーナル「プロスワン」で発表した研究論文が初となる。

journal.pone.0245247.jpg

Sowada/PLOS ON

このミイラは、豪州の政治家チャールズ・ニコルソン卿が1857年にエジプトから棺とともに豪州に持ち帰り、1860年にシドニー大学に寄贈したものだ。シドニー大学のチャウ・チャックウィン博物館で所蔵され、1999年にはCTスキャンによる分析が行われている。

研究チームは、2017年12月、最新のCTスキャナなどを用いてミイラの再調査を実施した。ミイラに巻かれていた亜麻布の試料から放射性炭素年代測定したところ、紀元前1207年頃にミイラ化されたものであることがわかった。

一方、女性名「メルア」と記された棺は、描かれている図像から、紀元前1000年頃のものと特定されている。これらのことから、棺はこのミイラのものではなく、現地の古美術商が、このミイラを別人の棺におさめ、ニコルソン卿にまとめて売りつけたと考えられる。

最初の埋葬から60〜70年後に、泥を用いて修復された?

このミイラは死後、布に巻かれて埋葬された後、何らかの事情により左ひざや下腿などが損傷し、最初の埋葬から60〜70年後に、泥を用いて修復された。高位な人物のミイラの修復には、地中海沿岸から輸入した高価な樹脂がよく用いられることから、研究論文の筆頭著者でマッコーリー大学のカリン・ソワダ博士は「一般人が、より安価に入手できる素材としてナイル川近くの泥を用い、この手法を模倣しようとしたのではないか」と考察している。

古代エジプト時代、ミイラを泥で修復するという手法がどのくらい普及していたのかはまだ解明されていないが、一連の研究成果は、古代エジプトのミイラの研究をさらに一歩すすめるものとして注目されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

今年の独成長率、エネ高騰持続なら0.6% IFO予

ビジネス

独衣料通販ザランド、AIで生産性向上と説明 今年は

ワールド

備蓄協調放出、「市場に強いインパクト」とIEA事務

ビジネス

ホンダが初の通期赤字転落へ、最大6900億円 EV
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 3
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 7
    「邪悪な魔女」はアメリカの歴史そのもの...歌と魔法…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 10
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 8
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 9
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 10
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中