最新記事

睡眠

よく眠るために必要なのは、睡眠時間を削ること

2021年2月12日(金)11時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

bymuratdeniz/iStock.

<ベッドにいる時間のうち実際に眠っている時間の割合「睡眠効率」を高めれば、ほとんどの人の睡眠問題は解消される>

健康、美容、能力アップ、認知症対策など、さまざまな分野で共通して大切だといわれているのが「睡眠」だ。しかし、多くの人が睡眠の悩みを抱えているのも事実だ。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2018年)によると、「ここ1カ月間、睡眠で休養が十分にとれていない」と回答した人の割合は21.7%だった。5人に1人が睡眠に悩みを抱えていることになる。そんな睡眠の悩みを解決するのが、本書4週間で誰でも寝つきがよくなる 最速入眠プログラムだ。

著者のマイケル・モズリーは医師で、BBCやディスカバリーチャンネルで長年プロデューサーをつとめるジャーナリストでもある。1995年には、ピロリ菌に関する報道番組で英国医師会の年間最優秀医学ジャーナリストにも選ばれ、その後も『週2日ゆる断食ダイエット』(幻冬舎)は世界的ベストセラーとなっている、英語圏では著名な科学ジャーナリストだ。

そのモズリー氏の新しいテーマが睡眠だった。自身が20年もの間、夜中に目が覚めてしまう状況に悩まされ、深刻な睡眠不足の影響を解明するべく、自らさまざまな実験を体験し、睡眠の質を向上させる方法をBBCの番組で検証した。その番組を書籍化したのが本書だ。

そもそもなぜ眠れないのか?

実は眠りたいという衝動は起きた瞬間から始まっている。目覚める直前に体内でストレスホルモンのひとつである、コルチゾールが大量に分泌され、その働きにより脳内にはアデノシンと呼ばれる化学物質が放出される。アデノシンは脳の受容体(レセプター)と結合し、脳の活動をゆっくりにするため、眠気が起こるのだ。したがって起きている時間が長ければ長いほど、アデノシンのレベルが高くなり、眠気も増していく(ちなみに、このアデノシンの動きをブロックするのがカフェイン)。

このアデノシンの他、眠気の推進力となるのが体内時計だ。しかし、よく言われるように体内時計は24時間ぴったりの周期で動いているわけでなく、個人差も大きい。この体内時計が早く進むタイプ(朝型)、遅く進むタイプ(夜型)があり、しかも遺伝子に基づいていることが今では明らかになっている。

遺伝子を変えることはできないが、その体内時計をリセットすることはできる。それが、モズリー氏の「熟睡プログラム(安眠プログラム)」だ。

熟睡プログラム2つのアプローチ

「熟睡プログラム(安眠プログラム)」は、「睡眠制限療法」と食事のふたつのアプローチが中心となっている。

「睡眠制限療法」は簡単に言えば、ベッドにいる時間を減らす方法である。睡眠に悩んでいる人は、できるだけ長い時間をベットで過ごそうとする。しかし、眠れずにただ横になって眠れないでいることは、脳がベッドと眠れずにイライラしていることを関連づけてしまうため、最悪の行動パターンが定着してしまう。睡眠制限療法とは、ベッドにいる時間を制限することで、脳内で結びついた「ベッド=眠れない」を断ち切る方法である。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イーライリリーの経口肥満症薬、2型糖尿病患者で体重

ビジネス

積極利下げの用意、経済の下振れ顕在化なら=マン英中

ビジネス

スズキ、EV強化へ80億ドル投資 インドの生産体制

ワールド

米政府、防衛関連企業への出資を模索する可能性=商務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    「ありがとう」は、なぜ便利な日本語なのか?...「言…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    トランプ、ウクライナのパイプライン攻撃に激怒...和…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中