最新記事

米中関係

バイデン政権の本音か? 米中電話会談、「一つの中国」原則に関する米中発表の食い違い

2021年2月8日(月)19時48分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

2015年に訪中し、楊潔チと「仲良く」会談したブリンケン国務副長官(当時) Mark Schiefelbein-REUTERS

2月5日、ブリンケン米国務長官が中国の楊潔チ・外交トップと電話会談したが、中国側発表では、「一つの中国」原則を遵守するとブリンケン氏が言ったとのこと。米側発表にはない内容だ。もし言ってないのなら、なぜブリンケン氏から反論がないのか?

アメリカ側の公式発表

まずアメリカ国務省の公式発表を見てみよう。公式発表では、ブリンケン国務長官は以下のよう主張したとなっている。

1.新疆ウイグル自治区やチベット自治区および香港を含めて、アメリカは人権問題と民主的価値を支持し続けると強調した。

2.ミャンマーの軍事クーデターに関して、中国も国際社会とともに非難するよう迫った。

3.アメリカは同盟国や友好国と連携して、我々が共有する価値観や利益を守るために協力し、台湾海峡を含むインド太平洋地域の安定を脅かし国際秩序を弱体化させている中国に説明責任を負わせることを再確認した。

中国側の公式発表

一方、中国側はこの「同じ電話会談」の内容を、どのように発表したのか。別の会談に関する発表ではないかと思われるほど、かなり異なる会談内容を発表しているのでご紹介する。

以下は中国外交部の公式発表による楊潔チ・中共中央政治局委員兼中央外事工作委員会弁公室主任の発言内容である。あまりに長いので、重要でない部分(中国に対する誇張的自画自賛)に関しては省略し、肝心な部分の概要をご紹介する。

一、中米関係は正念場を迎えている。中国はアメリカが過去一定期間において犯してきた過ちを正し、中国とともに不衝突・非対抗の精神を堅持し、相互尊重とウィンウィンの精神に基づいて協力し、相違点を調整して、米中関係の健全で安定した発展を促進するよう促した。

二、中米両国は互いの核心的利益と各自が選択した政治制度を尊重し、各自が自国の事に専念すべきである。中国は揺ぎなき決意で中国の特色ある社会主義の道を貫き中華民族の偉大なる復興を実現する。いかなる人もそれを妨げることはできないと強調した。

三、台湾問題は米中関係の中で最も重要で敏感な核心的問題で、これはあくまでも中国の主権と領土保全の問題だ。アメリカは何としても厳格に「一つの中国」原則と「中米三つのコミュニケ」を守らなければならない。香港・ウイグル・チベットに干渉することは、すべて中国への内政干渉だ。中国はいかなる外部勢力による干渉も認めない。中国を侮蔑中傷する試みは全て失敗するだろう。中国は国家主権と安全と発展と利益を断固として守り続ける。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GDPギャップ、25年4―6月期は需要超2兆円=内

ビジネス

午後3時のドルはドル147円付近、売り材料重なる 

ワールド

ロシア、200以上の施設でウクライナの子どもを再教

ワールド

アングル:米保守活動家の銃撃事件、トランプ氏が情報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中