バイデン政権は温暖化対策へ総力戦の布陣 省庁ごとの戦略まとめ
米国のジョー・バイデン大統領は「政府が一丸となった」気候変動対策を公約している。写真は15日、デラウェア州ウィルミントンで撮影(2021年 ロイター/Kevin Lamarque)
米国のジョー・バイデン大統領は「政府が一丸となった」気候変動対策を公約している。全米での温室効果ガス排出量を劇的に減少させるというバイデン新政権の目標を達成するには、国防総省から財務省に至るまで、すべての連邦政府機関の貢献が必要になるだろう。
この戦略は、もっぱら環境保護庁を通じて気候変動対応戦略を推進する傾向のあった歴代の民主党政権とは一線を画する。与野党伯仲状態にある連邦議会では包括的な気候変動対策法案を成立させるのは容易ではない。複数省庁による全政府的なアプローチであれば、そうした法制に頼ることなく、バイデン新政権が地球温暖化対策を推し進めることが容易になる。
気候変動問題に関してバイデン氏の政権移行チームに助言を行っている啓発団体エバーグリーン・アクションの共同創設者サム・リケッツ氏は「今や、あらゆる政府機関が気候変動担当だ」と語る(https://joebiden.com/climate-plan/)。
バイデン新政権の気候変動関連の政策課題において、連邦機関がどのような役割を果たす可能性があるのか、いくつか見ていくことにしよう。
環境保護庁(EPA)
EPAは環境に関して米国を代表する規制当局であり、バイデン新政権が気候変動抑制を強化し、規制を執行していこうとする際に、まずEPAの名が挙がるのは当然だろう。またEPAが、トランプ政権では一貫して廃止の方向にあったルールや科学的プロセスを再構築していく可能性もある。
内務省
国土の5分の1を管轄下に収める内務省が担うのは、2030年までに全米の土地・水域の3分の1近くを保全対象とするというバイデン氏の選挙公約だ。またトランプ政権で優先されてきた石油、天然ガス、石炭から、太陽光や風力、地熱といったクリーンエネルギー源へと移行していくなかで、内務省がエネルギー・鉱物資源開発のリース権プログラムの見直しを進める可能性が高い。バイデン氏は連邦が管理する土地・水域における新規の石油・天然ガス採掘を中止すると公約しており、この政策については内務省が主導する必要がある。
エネルギー省
高度な原子力発電、核融合、バッテリー、バイオ燃料といった技術も含め、クリーンエネルギーの研究開発プログラムへの取り組みの先頭に立つのがエネルギー省だ。バイデン氏は、最終的に米国における温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにするよう、クリーンエネルギー技術に巨額の公共投資を振り向けると述べている。
国防総省
連邦政府機関の中で、化石燃料の購入量で単独首位に立つのが国防総省だ。啓発団体エバーグリーン・アクションがバイデン氏の政権移行チームに送った覚書では、国防総省が巨大な調達能力によって「クリーンでレジリエントな(回復力のある)エネルギー技術や先進的な低炭素燃料を購入し、国内のレジリエンス(回復力)を高めるとともに、社会を揺るがす気候変動の脅威の克服に資する産業の構築に寄与する」ことも可能だとされている。