最新記事

アメリカ政治

バイデン政権は温暖化対策へ総力戦の布陣 省庁ごとの戦略まとめ

2021年1月22日(金)13時13分

財務省

財務省では、金融規制改革法(ドッド・フランク法)を利用して、銀行その他の金融機関に対し、投資の際に気候関連リスクを織り込むよう義務付けるかもしれない。そうなれば民間投資の大きな流れがクリーンエネルギーに向かうだろう。また、連邦政府による対外融資プログラムに関して、国外での高炭素プロジェクトへの投資を禁じるような基準を財務省が創設する可能性がある。

オバマ政権下でホワイトハウスの「環境の質に関する審議会」座長を務め、バイデン氏の政権移行チームでも気候変動対策に向けた連邦機関活用のためのロードマップ「クライメート21」(https://climate21.org/)の共同執筆者となったクリスティ・ゴールドファス氏は、「財務省は今後、気候変動問題に関してかなり重要なプレイヤーになっていくと考えている」と話している。

農務省

農業は米国の温室効果ガス排出量のうち9%を占めている。反面、やはり農務省の管轄である国内の森林地域は、化石燃料による年間排出量の最大15%を吸収している。農務省は排出権制度を通じて、排出量の削減・相殺に寄与している農家、酪農家、森林所有者に給付を行うことが可能だ。またバイデン氏に助言している政策専門家によれば、農務省は「気候変動に配慮した農業」の促進に向けて農作物保険を活用することもできるという。

教育省

教育省は、気候変動に関する意識向上をめざす専門教師・講座に対して連邦政府の財源を回すことができる。また、その調達能力を活かして、通学バスへの電気自動車導入や学校建築の環境最適化を支援することもできる。

オバマ政権で教育長官を務めたジョン・キング・ジュニア氏は、「K-12(幼稚園─高校)レベル、また高等教育機関において、再生可能エネルギーや建築物の改良、電気自動車やインフラといった分野での就業につながる専門教育に新たな投資を行うチャンスもたくさんあるのではないか」と語っている。

司法省

司法省で環境関連の法執行を担当する弁護士を務めていたケイト・コンシュニック氏によれば、司法省は新政権の気候変動対応政策をめぐる訴訟で被告の立場に立たされることになるが、その一方で、連邦政府を当事者とする気候問題に関わる民事訴訟を優先する、環境汚染企業との和解に向けて補助的な気候対策プロジェクトを提案する、大企業に対する法執行活動を強化するといった動きもありうるという。

またバイデン氏は、気候変動対策の計画のなかで、気候変動・環境関連の司法活動を優先すべく、司法省内に環境・気候問題担当部門を創設すると述べている。

(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・議会突入の「戦犯」は誰なのか? トランプと一族、取り巻きたちの全内幕
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】



ニューズウィーク日本版 豪ワーホリ残酷物語
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月9日号(9月2日発売)は「豪ワーホリ残酷物語」特集。円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代――オーストラリアで搾取される若者のリアル

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ユーロ圏政権崩壊リスク懸念、仏銀行システムは堅固=

ワールド

インド製造業PMI、8月改定値は17年ぶり高水準 

ワールド

トランプ大統領のFRB介入、世界経済にリスク EC

ワールド

債券市場の機能度DI、8月はマイナス34 5月の急
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマンスも変える「頸部トレーニング」の真実とは?
  • 3
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シャロン・ストーンの過激衣装にネット衝撃
  • 4
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 5
    「体を動かすと頭が冴える」は気のせいじゃなかった⋯…
  • 6
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 9
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 8
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 9
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中