最新記事

米議会占拠

【現地ルポ】民主主義の砦が汚された、アメリカの一番醜い日

TRUMP RIOTERS STORM CAPITOL

2021年1月9日(土)17時10分
ジャック・デッチ、エイミー・マッキノン、ロビー・グレイマー、コラム・リンチ (いずれもフォーリン・ポリシー誌記者)

ニューヨーク・タイムズ紙やCNNなどのメディアは、「より力強いメッセージを出すべき」と促す側近たちの助言にトランプが耳を傾けていないと報じた。

連邦議会では大統領選の結果を認定する手続きが進められていたが、この騒ぎで中断した。共和党議員は選挙の後、バイデン勝利の認定を支持する多数派と、選挙に大規模な不正があったというトランプの根拠のない主張を支持する少数派に分裂していた。

イバンカが消したツイート

しかし政治的立場が異なる議員たちも、暴徒化したトランプ支持者が議事堂に乱入して議会手続きを中断させたことについては、一様に非難した。共和党議員やトランプ政権の元幹部の一部も、支持者をあおったとして大統領を非難。デモ隊を撤退させて、大統領選の敗北を認めるよう促した。

共和党のアダム・キンジンガー下院議員は、議会占拠はトランプ支持者の「クーデター未遂」だと断じた。同じく共和党下院議員で、海兵隊員としてイラクに2度派遣されたマイク・ギャラガーは「イラクでもこんな光景は見たことがない」と語った。「大統領はこの事態を終わらせるべきだ。選挙は終わったのだ」

magw210109-riot04.jpg

押し入ったデモ参加者を武装した警察官が制圧 STEFANI REYNOLDS-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

ワシントンの議事堂に暴徒が押し入ったのと同じ頃、全米各地でも同様の事態が発生していた。

ユタ州では州議会議事堂にトランプ支持者が続々と押し寄せ、職員が避難する事態になった。カンザス州ではデモ隊が州議会議事堂に侵入したが、地元メディアによれば大きな騒ぎにはならなかった。ジョージア州では民兵組織のメンバーが州議会議事堂に集まり、ブラッド・ラッフェンスパーガー州務長官が避難する羽目になった。

ワシントンの議事堂内は大混乱に陥っていた。ピーター・ウェルチ下院議員(民主党)はこうツイートした。「いまロタンダ(議事堂の円形広間)で催涙ガスが発射されたという。座席下にあるガスマスクを装着するよう指示が出た」

トランプの取り巻きも、事態を制御できなくなったようだった。大統領の娘イバンカと顧問弁護士のルディ・ジュリアーニは、暴徒に対して「愛国者」と呼び掛けつつ、抗議活動は平和的に行うよう促した。

「愛国者たちへ──セキュリティーの侵害や法執行機関への敬意を欠くいかなる行為も、受け入れられないものです」と、イバンカはツイートした。「暴力はすぐにやめるべきです。平和的に行動してください」

その後、彼女はこのツイートを削除した。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2021年1月19日号「トランプは終わらない」特集より>

(トランプ自身、また「トランプ現象」はこれで終わりを迎えるのか――。1月13日発売の本誌では、連邦議会占拠事件が浮き彫りにした「欠陥」、今後のアメリカに残す「爪痕」について特集します)

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、ウクライナで化学兵器使用 禁止条約に違反=

ビジネス

ドル一時153円まで4円超下落、再び介入観測 日本

ワールド

米、新たな対ロシア制裁発表 中国企業を狙い撃ち

ビジネス

米地銀NYCB、向こう2年の利益見通しが予想大幅に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中