最新記事

2020米大統領選

【独占】トランプは戒厳令もやりかねない──警戒強める国防総省と米軍幹部

Exclusive: Donald Trump's Martial-Law Talk Has Military on Red Alert

2020年12月25日(金)16時47分
ウィリアム・アーキン(元陸軍情報分析官)

だが国防総省は本誌の取材に対して、軍は選挙結果に関与しないと複数の幹部の言葉を引用した正式回答をよこしたものの、選挙後の危機対応や戒厳令の可能性に関してはコメントを拒否し、ホワイトハウスに質問すべきだと述べた。そしてホワイトハウスもコメントを拒否した。

この問題について取材に応じてくれた軍関係者たちも、トランプの怒りを買うことを恐れて匿名を条件とした。戒厳令の発出であれ、投票機の押収であれ、連邦議会による1月6日の投票人投票結果承認の阻止であれ、選挙への信頼を傷つけようとするトランプの試みに公に反対の姿勢を表明すれば、トランプが余計にそれを実行しようとするのではないかと恐れたのだ。

北米を管轄する北方軍の元司令官は「現時点では、大統領が来月(2021年1月)何をする気か全く分からない」と述べ、こう続けた。「軍制服組の指導部に分別があることは確かだが、こんなに常軌を逸した状態はこれまでに経験がないし、どんなことでも起き得る」

「軍を使って選挙のやり直しを」

ある意味、軍は既に選挙結果をめぐる問題に巻き込まれている。トランプが先日恩赦した、元陸軍中将でトランプ政権の最初の国家安全保障担当大統領補佐官を務めたマイケル・フリンは、17日に保守派メディア「ニュースマックスTV」の番組の中で戒厳令に言及。大統領は軍を使って投票箱を押収し、一部の州で選挙を「やり直す」べきだと語った。

「大統領は軍の能力を使い、選挙をやり直させることができる」とフリンは主張。「大統領は、起こり得るあらゆる事態に備えて計画を立てるべきだ。今回の選挙と、この国の選挙の完全性が、今のような状態になるのを許すことはできないからだ」

フリンのこの発言に、多くの元軍高官から非難の声があがった。コリン・パウエル元国務長官の首席補佐官だったロレンス・ウィルカーソン中佐はMSNBCの番組で、フリンは「自らの制服を汚した」と語った。

ニューヨーク・タイムズ紙とCNNによれば、フリンは前述のテレビ出演の後、週末に大統領執務室に呼ばれ、そこで改めて提案を行った。これ以降、側近たちは大統領が何を考えているかについて口を閉ざしており、軍関係者たちは、一連の議論に国防総省は無関係だと主張。軍内部には、トランプに大統領の座を維持させるために武装部隊を動員することを支持する者はいないと述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中