最新記事

2020米大統領選

【独占】トランプは戒厳令もやりかねない──警戒強める国防総省と米軍幹部

Exclusive: Donald Trump's Martial-Law Talk Has Military on Red Alert

2020年12月25日(金)16時47分
ウィリアム・アーキン(元陸軍情報分析官)

軍は選挙結果に介入する立場にないが、巻き込まれる可能性はある(写真は6月、米陸軍士官学校の卒業式に祝辞を述べるトランプ) Jonathan Ernst-REUTERS

<大統領選の結果を覆すため、1月20日の大統領就任式まではどんな命令があるかわらない。その時のための秘密の対応策が作られている>

大統領選挙での敗北をいまだ認めないドナルド・トランプ米大統領は、退任までにどんな行動に出るかわからない──米国防総省と米軍上層部はそう警戒感を募らせている。

国防総省の高官たちは、トランプが戒厳令を発出した場合の対応を議論し、首都ワシントンを管轄する軍司令部は、次期大統領の就任前に「治安維持」を目的とした部隊が必要になる可能性に備えて、緊急時対応策を練っている。匿名を条件に本誌に語った軍高官によれば、緊急事対応の作成はホワイトハウスや国防総省内のトランプ支持派には内密に進められている。知られると潰されるおそれがあるためだ。

米海軍の元将官は、「軍に携わって40年以上になるが、この種の議論が必要になったのは初めてだ」と語る。他の6人の軍関係者たちは、軍が大統領選挙の結果を覆す計画に関与することは絶対にないが、トランプが引き起こす危機に軍が巻き込まれることはあり得ると不安を口にした。

彼らが特に心配しているのは、トランプが民兵組織や親トランプ派の自警団を動員して、政権移行の邪魔をさせたり、首都ワシントンに暴動を引き起こしたりする可能性だ。

トランプが握る「前例のない権限」

かつて法務総監を務めたある人物は、「新型コロナウイルスの感染が拡大している非常時の今、大統領は前例のない権限を手にしている。一部の支持者の声を真に受けた大統領が、自分は何でもできる、自分は法を超越した存在だと思い込む可能性もある」と語った。

戒厳令の発出は、今後の危険を想定した考え方として間違っている」と述べた。軍事法規である戒厳令には、軍自体を取り締まるという重要な要素が欠けており、一部の軍高官がトランプの違法な動きに呼応したり、黙認したりする可能性があるからだ。

この元法務総監も他の複数の専門家も、現在の軍内部にそのようなグループは存在しないと考えているが、それでも不正や混乱が発生したり、軍事力が行使されたりする可能性は残る。とりわけトランプが民主的なプロセスを揺るがそうとし続けた場合、事態が彼の意図しない方向に進むことも予想される。

ライアン・マッカーシー米陸軍長官とジェームス・マコンビル陸軍参謀総長は12月18日に出した共同声明の中で、「アメリカの選挙結果の決定に、米軍は一切関与する立場にない」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中