最新記事

アメリカ政治

新星ブティジェッジがアメリカの車社会を変えられるこれだけの理由

Planes, Trains, and Relentless Ambition

2020年12月24日(木)17時00分
ヘンリー・グラバー

ブティジェッジはバイデン(右)からも「息子を思い起こさせる」と最大級の信頼を得ている KEVIN LAMARQUE-REUTERS

<バイデン政権の運輸長官に指名された38歳のピート・ブティジェッジが挑むのは、破綻寸前の交通システム改革だ>

1月20日の就任に向けて、新政権の人事を着々と進めるジョー・バイデン次期米大統領。12月15日には、ピート・ブティジェッジ前サウスベンド市長(38)を運輸長官に指名することを発表した(就任するのは上院の指名承認を経てからになる)。

サウスベンドはインディアナ州の人口10万人程度の都市で、ブティジェッジには連邦どころか州レベルの政治経験もない。だが、2019年に民主党の大統領候補指名争いに名乗りを上げると、緒戦で予想以上の健闘を示し、全米の注目を集めることになった。

一方で、ハーバード大学卒で、ローズ奨学生として英オックスフォード大学に留学し、コンサルティング会社マッキンゼーに就職と、エリート街道をまっしぐらに歩んできたブティジェッジは、自分が大統領の候補指名を獲得する可能性がないと見極めるのも早かった。

序盤の山場である2020年3月のスーパーチューズデー直前に予備選から撤退すると、すぐにバイデン支持を表明。その後はバイデン陣営のブレーンとして選挙戦を支えてきた。

そんなブティジェッジに、バイデンは「(亡くなった長男)ボウを思い起こさせる」と、個人的にも最大級の信頼を寄せていた。それだけにブティジェッジの政権入りは確実とみられていた。

次期運輸長官は2つの大きな課題に直面する。まず、気候変動対策だ。運輸部門は、アメリカ最大の地球温暖化ガス排出源の1つであり、カーボン・フットプリント(二酸化炭素排出量)を減らすためには、運輸部門における排出削減を避けて通れない。

2つ目の大きな課題は、コロナ禍の影響だ。コロナ禍とその後の不況は、航空各社をはじめ運輸業に計り知れないダメージを与えている。さらに運輸長官は、全米の交通局に莫大な補助金を交付し、空港やハイウエーや鉄道などのインフラに目を配り、自動走行車などの新しい技術も管理しなければならない。

こうした課題を考えたとき、「ブティジェッジ運輸長官」は最適の人事とは言い難い。アメリカの行政が機能不全に陥っているのは、専門的な経験や知識のある人材を登用せず、こうした「ご褒美人事」がはびこっているからだという批判を勢いづかせそうだ。

市長時代の画期的政策

だが、楽観できる点もある。民主党中道派のブティジェッジは、予備選でも、進歩主義的過ぎない気候変動対策や運輸政策を唱えていた。しかもその根底には、アメリカが人々の生活や自然環境を犠牲にしながら、車中心の社会を構築してきたという正しい事実認識があるようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米韓が貿易協定に合意、相互・車関税15% 対米投資

ワールド

タイ財務省、今年の経済成長率予想を2.2%に小幅上

ビジネス

中国製造業PMI、7月は49.3に低下 4カ月連続

ワールド

米、カンボジア・タイと貿易協定締結 ラトニック商務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 10
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中