最新記事

感染症対策

広大な土地の米農村部、ワクチン接種に課題 最大の問題はドライアイスの確保

2020年12月13日(日)12時43分

インディアナ州のシンシナティとインディアナポリスの間に位置するベイツビルの医療施設、マーガレット・メアリー・ヘルスは、医療や介護の従事者に接種の準備をするに当たり、ワクチンを無駄にしたり品質が劣化したりしないよう計画を進めている。そうした対象者は1400平方マイル(3626平方キロ)の広大な地域に散らばっている。予定している接種拠点は2カ所で、1カ所は消防署の敷地を使ってドライブスルー式にする。

そこでは、万が一に備えてドライアイスを大量に確保し、冷凍容器業者とも十分に契約した。接種予約の受付作業にも入ろうとしており、予約を入れても来場しなかった人の分のワクチンが無駄になるのを避けるため、その場合に対象になる人のリストも用意する。

同施設のティム・パットナム最高経営責任者(CEO)は「ワクチンを容器から取り出したら、必ず誰かの腕に接種することになる」と話した。

ドライアイス供給に不安

ファイザーと配送会社のUPSの間では、ドライアイスはオプションで詰め替え用に23キロが用意されるが、ワクチンの受け手側は自分で用意することになる。

多くの州は、既にドライアイスの配送日程を調整している。オハイオ州のゲム・アンド・サンズ社はオハイオ州との間で、1週間当たり1万5000ポンド(6804キロ)分のドライアイス片を、配送料込みで、1ポンド当たり0.55ドルで供給する契約だ。

ドライアイスは二酸化炭素(Co2)で作る。圧縮ガス協会(CGA)によると、コロナワクチンでCo2需要は5%増える見込みだが、供給は現在の生産能力で対応できるとみている。

しかし、一部のドライアイス供給業者は、どれだけ多くのドライアイスが必要になる分からない部分が多いため、ワクチン接種計画は難しい作業になると指摘する。テネシー州のネクスエアの担当副社長、スティーブ・アトキンス氏は「国内には供給態勢が脆弱だったり、不十分だったりするところも出てくるだろう」と述べた。

ドライアイスのCo2を作るエタノール工場の多くは、コロナ流行の早い時期に操業が停止。再生可能エネルギー協会によると、今は改善しているが、それでもCo2の生産量は前年を約25%下回る状態が続いている。

インディアナ州のあるドライアイス会社は、もっぱら地元の病院からの電話をさばいている。同社幹部は、ドライアイスの製造業者や配送業者は「ごく少ないからね」と話した。

(Stephanie Kelly記者 Lisa Baertlein記者 Carl O'Donnell記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・巨大クルーズ船の密室で横行する性暴力



ニューズウィーク日本版 岐路に立つアメリカ経済
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月3日号(5月27日発売)は「岐路に立つアメリカ経済」特集。関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ

ワールド

米国防長官、「中国の脅威」警告 アジア同盟国に国防

ビジネス

中国5月製造業PMIは49.5、2カ月連続50割れ

ビジネス

アングル:中国のロボタクシー企業、こぞって中東に進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 6
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 7
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 8
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 9
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 10
    第三次大戦はもう始まっている...「死の4人組」と「…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 4
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 10
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中