最新記事

黒人差別

警官の暴力は許せないが、警官の顔撮影は禁止するというマクロンの二枚舌

Clip of French Police Beating Black Man Watched 14M Times

2020年12月1日(火)18時30分
レベッカ・スピアコール

マクロンは今回の一件を「恥ずべきこと」と称し、警察と市民の間の信頼関係を再構築する方法について、早急に政府案を取りまとめるよう指示した。マクロンは動画を見て激怒し、ジェラルド・ダルマナン内相を大統領公邸であるエリゼ宮に呼び出したという。

「ミシェル・ゼクレア氏に対する暴行を捉えた映像は、すべての人にとって容認できない、恥ずべきものだ。フランスは、いかなる者による暴力行為や残虐行為も決して許さない。憎悪や人種差別の広がりを許してはならない」とマクロンはフェイスブックに声明を出した。「法の適用を仕事とする者たちは、法を尊重すべきだ」

またマクロンはツイッターへの投稿で、変革のための提案を取りまとめるよう要求し、次のように述べた。「日々私たちを守るために勇敢に働いている人々の一部による、不当な暴力は決して容認しない」

ダルマナンは、問題の警察官らの解雇を求めていく意向を表明。11月27日にフランスのテレビ番組に出演し、彼らは「フランスの警察の評判を傷つけた」と批判したが、一方で警察全体については擁護した。

「警察や憲兵のことは支持している」とダルマナンはツイート。「彼らの大部分は、困難な状況のなか素晴らしい仕事をしている」

各地で警察撮影禁止法案に抗議のデモ

ダルマナンに対しては、極右の政治家として知られるマリーヌ・ルペンの支持者に媚びを売っているという批判の声もある。だがダルマナンは、今回の事件について、ゼクレアに対する暴力行為を「言葉にならないほどの衝撃」とはっきり批判しており、マクロンに至っては、動画を見て(怒りのあまり)「真っ赤になった」とも報じられている。

だが動画の暴力に怒りを表明した後も、マクロンに対しては厳しい批判の声がある。政府が、警察官に害を及ぼす意図をもって警察官の写真や動画を公開することを禁じる、新たな法案(グローバルセキュリティー法案)の成立を目指しているためだ。フランス各地でこの法案に抗議するデモが展開されている。

人種差別反対を訴える活動家のシハーム・アスベグは、AP通信に対して、「移民や人口密集地域に暮らす住民たちは、何十年も前から警察の残虐行為を非難してきた」と指摘。一般市民が撮影した動画が「権力の乱用や暴力行為、残虐行為など、フランスの警察が抱える制度上の問題」に注目を集める上で役に立ってきたと主張した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

クウェート、暗号資産マイニング業者を摘発 電力危機

ワールド

米軍大将ポスト2割削減を指示、国防長官「戦略的即応

ビジネス

4月の世界食料価格は1%上昇 穀物や乳製品上昇 砂

ビジネス

米アップル、2年ぶり起債で45億ドル調達
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗と思え...できる管理職は何と言われる?
  • 3
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どちらが高い地位」?...比較動画が話題に
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 6
    背を向け逃げる男性をホッキョクグマが猛追...北極圏…
  • 7
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 8
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 5
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 6
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 7
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 6
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中