最新記事

イギリス

EU離脱にコロナ禍で「二重苦」 英国シティの再起の道は

2020年12月15日(火)10時28分

不動産コンサルタントのナイト・フランクによれば、シティにおける第3四半期のオフィス稼働率は前年同期比で68%低下しており、シティ幹部らは賃貸先企業を金融企業だけでなく、テクノロジー、メディア、法律事務所まで多角化する戦略を強化する取り組みを急ぎはじめているという。

ゴールディン氏によれば、CCランドはシティで2番目に背の高い超高層ビルを2017年6月に11億5000万ポンドで購入して以来、入居企業向けにまるで5つ星ホテルのようなサービスを多数導入してきたという。

リーデンホール・ビルディングは満室状態で、賃貸対象の45フロアのうち、6フロアはITサービス、イベント運営、建築・デザイン、エネルギー流通など、金融以外のセクターのテナントに貸し出されている。平均リース期間は約10年を残している。

このビルで働く人々は、ビル内で、教育プログラムやメンタルヘルスのワークショップ、フィットネスのためのブートキャンプ、社交イベントに参加することができる。

「社員がロンドンにいたいと思うなら、企業もロンドンに残らざるをえない」とゴールディン氏は言う。「選択肢とされる欧州の他都市では、都市中枢に求められる特性を提供していない。ロンドンならすべてが揃う。ダメなのは天気くらいだ」

EUから世界へ拡大も

ロンドンがブレグジットとCOVID-19という二重の脅威をやり過ごすことができれば、引き続き繁栄が約束される。

マクギネス氏は、「人々が何を望んでいるのかを注意深く見極め、将来のニーズに見合うようにルールを策定していく必要がある」と語る。「ロンドンは今後も金融・専門サービスの中心地であり続けると確信している」

また当局は、ロンドンの市場をテクノロジー企業やEU以外の各国企業にとってさらに魅力的なものにするよう、法令の改正を進めている。

英国はすでに日本と締結した通商協定で、国際的な銀行にとっての煩雑な手続を削減し、金融機関が取引データを現地に保管する義務をなくすための規制協力を申し合わせている。スイスとの間では、金融サービス面での連携を深めるために規則の相互承認を行うと発表している。

英国のジョン・グレン金融サービス担当相は、新たな金融サービス法案により、現代的で柔軟性に富み、信頼性の高い規制システムが誕生すると述べている。

ジョナサン・ヒル元欧州委員(金融サービス担当)は、最大の顧客であるEUに対する無制限のアクセスを失った後も、長年のライバルであるニューヨーク証券取引所との競争を続けられるよう、浮動株指数化及びデュアルクラス株式に目配りしつつ、ロンドン証券取引所の上場規則見直しを開始している。

米金融大手シティバンクの英国事業を率いるジェームス・バードリック氏はロイターに対し、「英国の金融サービスは長年にわたり、高い水準と信頼性、イノベーション、思慮深いリーダーシップという点で評価されてきた」と語った。「これが続く限り、私たちがさらに国際事業を拡大できない理由はない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中