最新記事

アメリカ社会

トランプが残したデマ地獄で「Qアノン」が共和党を乗っ取る日

QAnon Believers Have Lost Their Savior, But Their Power is Growing

2020年11月13日(金)18時40分
イワン・パーマー

「Qが2017年に行った最初の主張は、『あすヒラリー・クリントンが逮捕される』というものだった」とテノルドは本誌に語った。「これ以降、Qアノンはさまざまな予言や予想を行ったものの、どれも実現しなかった。それでもQアノンの勢いはまったく衰えていない」

Qアノンはほかにも幾つかの陰謀論を強く主張している。たとえば家具販売サイトのウェイフェアが、高額商品に見せかけて児童の人身売買を行っているとか、ジョン・F・ケネディ・ジュニアは今も生きていて、トランプに代わって選挙活動を行うだろうなどというのもある。

「現実世界がどうであろうと、Qアノンにあまり影響はないようだ」とテノルドはさらに述べた。

Qアノンは支持者たちの緩い集合体で、それぞれが独自の解釈を持っているため、大統領選の結果がQアノンにとって何を意味するかについて、彼らの間にひとつのまとまった合意はない。

トランプ自身が「勝利宣言」をしたことで、当然ながら多くのQアノン支持者は今も、選挙に勝ったのはトランプだと主張している。もっともなかには、トランプの敗北がなんらかの「計画」の一部なのかどうか確信が持てず、自分たちはずっと騙されていたのだと失望している者もいる。

汚染されたアメリカ人の意識

そして多くのQアノン支持者が、「Q」はなぜ大統領選以降、一度も投稿を行っていないのか、大統領選当日の11月3日こそが自分たちの運動の未来を左右する重要な日のはずなのに、なぜ新しい情報を提供しないのかと、苛立ちや混乱を募らせている。「Q」は11月8日にバイデンの勝利が宣言された後も沈黙を守っており、一部の支持者は怒りを表している。

「Q」の投稿は現在(最初の4chanも次の8chanも閉鎖されため)掲示板の「8kun」に投稿されているが、最後の投稿はエイブラハム・リンカーン元大統領のゲティスバーグ演説からの引用を記し、1992年公開の映画『ラスト・オブ・モヒカン』のミュージック・ビデオへのリンクを貼ったもの。最後は「我々は共に勝利する」というお得意のフレーズで締めくくられている。「Q」が沈黙したのは今回が初めてではなく、これまでにも何日も、あるいは何週間も新たな投稿がないことはあった。

また大統領選と同じ日、8kunの管理人であるロン・ワトキンスが、同サイトの管理人を退くと発表。これを受けて、大統領選とワトキンスの引退にはつながりがあるのではないか、という憶測も浮上している。

トランプの退任後、誰がQアノンの「救世主」の役割を受け継ぐのか、それともQアノンがもうトランプを信じなくなるのかは分からない。だがトランプの敗北とともにQアノンの陰謀論もすぐに消えてなくなるだろうという考えは甘いかもしれない。Qアノンはこの3年間で、人々が思うよりはるかに深くアメリカ人の意識に入り込んだからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国自動車販売、25年3.9%増 今年は横ばいと乗

ビジネス

今年もM&Aは好調見通し、リスクに備え規模追求=J

ワールド

トランプ氏のベネズエラ重視に側近が懸念、中間選挙へ

ワールド

ロが新型ミサイルで攻撃、大統領公邸攻撃に報復 キー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    「不法移民からアメリカを守る」ICEが市民を射殺、証…
  • 8
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 9
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 10
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中