最新記事

臓器売買

交通事故の犠牲者から臓器を取り出し売買──中国の医師に実刑判決

Chinese Doctors Harvested Organs of Car Crash Victims

2020年11月30日(月)18時15分
リディア・スミス

臓器不足で犯罪が後を絶たない(写真はイメージ) FangXiaNuo-iStock.

<移植用の臓器が不足する中、合法的な臓器提供を装うなど手口も巧妙化>

中国・安徽省で交通事故の犠牲者などから移植目的で臓器を違法に取り出したとして、臓器密売組織の6人(医師を含む)が有罪判決を受けた。

地元メディアの報道をもとに英BBCなどが報じたところによると、この密売組織は2017~18年にかけ、11人の患者から肝臓と腎臓を取り出した。遺族は正式な手続きによる臓器提供だと思っていたという。

安徽省蚌埠市の裁判所は7月、6人に禁錮10~28カ月の有罪判決を言い渡したと香港紙サウスチャイナ・モーニングポストは伝えている。

報道によれば、事件の舞台となったのは安徽省にある懐遠県人民病院。狙われたのは交通事故の犠牲者や、脳に大きなダメージを受けた患者だったという。

有罪判決を受けた医師の1人は集中治療室の責任者で、患者の家族に対し、臓器提供に同意するか尋ねていたという。ところが、家族がサインさせられた同意書は偽物だった。

遺体は夜のうちに救急車に偽装した車で病院から運び出され、車中で臓器を摘出された。

その後、密売組織は個人や他の医療機関に秘密裏に接触し、臓器の売買を持ちかけたという。

摘発のきっかけとなったのは、ある男性が母親の臓器提供に関する書類に不審な点をいくつも見つけたことだった。

受刑者からの臓器摘出が続いているとの見方

サウスチャイナ・モーニングポストによればこの男性は、18年に母の臓器提供に家族が応じた際に渡された書類をチェック。その後、提供に関する公式な記録がないことが判明、密売組織から口止め料の支払いを打診されたという。

中国では移植のための臓器提供が少ないことが深刻な問題となっている。かつては死刑囚の遺体からの臓器摘出が行われていたが15年に停止され、以来、「自発的な一般市民のドナー」以外からの臓器提供はないと当局は主張している。だが文化的な抵抗感もあって、提供件数は低迷している。

昨年、イギリスで医療や人権問題の専門家の証言をもとにした調査が行われ、中国では臓器目的の受刑者の殺害が続いているとの結論が出された。また、犠牲者の中には非合法宗教団体の法輪功の信者が含まれている可能性が高いという(中国当局は否定している)。

一方、英ガーディアン紙によると、2017年にバチカンで開かれた国際会議では、中国の国家臓器提供・移植委員会の主任を務める黄潔夫が、死刑囚の遺体から取り出された臓器がまだ移植に使われている可能性を認めた。黄は80人の医師やNGOの代表を含む出席者を前に、中国は状況改善への努力を続けていると述べたという。

ニューズウィーク日本版 非婚化する世界
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月17日号(6月10日発売)は「非婚化する世界」特集。非婚化と少子化の波がアメリカやヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中