最新記事

アメリカ政治

「身内」で固めたバイデン外交チームに待ち受ける難題

2020年11月26日(木)09時11分

米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領が23日に指名した2人は、その協調性、同盟国を支援する姿勢、外交を安全保障の第一のツールと考える冷静さで知られている。写真はデラウェア州ウィルミントンでビデオ会議を行うバイデン氏(2020年 ロイター/Joshua Roberts)

ライバルたちも含めた挙党体制かと言えば、答えはノーだ。米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領が23日に指名した2人、つまり国務長官のアントニー・ブリンケン氏、国家安全保障担当大統領補佐官のジェイク・サリバン氏は、その協調性、同盟国を支援する姿勢、外交を安全保障の第一のツールと考える冷静さで知られている。

2人は政策の機微に通じていると評価されている。特にブリンケン氏の場合は、連邦政府の国家安全保障会議と上院外交委員会での長い経験によって鍛えられている。だが一部には、国家安全保障の表舞台に立つリーダーの器かどうか危ぶむ声もある。

エイブラハム・リンカーン、バラク・オバマ両大統領に顕著だったが、過去には、自身にとって最も手強い政敵さえ何人か取り込むような重量級の政権を構築した大統領もいた。それに比べてバイデン氏の選択には、これまで多年にわたり同氏と手を携え、ともに働いてきた元スタッフが顔を揃える。

ブリンケン氏、そして国務省出身でオバマ政権時代はバイデン氏の外交政策首席補佐官を務めたサリバン氏は、時として混乱を見せたドナルド・トランプ大統領による外交政策を転換していくうえで、どのような政策課題に直面するのか、いくつか見ていこう。

中国

バイデン政権の外交政策チームにとって主要課題となると予想されるのは中国である。折しも、米中両国政府の関係はここ数十年で最悪の状況に陥っている。

選挙期間中、トランプ氏は繰り返し、バイデン氏が勝利すれば中国が「米国を所有」するようになると警告してきたが、ブリンケン、サリバン両氏とも、バイデン政権になれば決して中国の思いどおりにはならない、と主張してきた。

トランプ大統領が、中国に対して強硬な貿易戦争を仕掛ける一方で、習近平国家主席には歯の浮くようなお世辞を進呈するなど、時として整合性に欠けるアプローチを示してきたのとは対照的に、2人がこれまで約束してきたのは、バイデン氏はもっと一貫性のある対中政策をとるだろう、ということだ。

また2人は、同盟諸国からの支援を促し、中国政府に対し、貿易、香港、南シナ海、新型コロナウイルス、人権といった問題に関する国際規範を尊重するようプレッシャーをかけていくものと予想される。

ブリンケン氏は9月、「外国による不正行為が米国の雇用を脅かすことがあれば、(バイデン氏は)必ず一貫して積極的に米国の通商関連法を発動させるだろう」と述べている。

とはいえ、バイデン氏の外交政策チームは、単にオバマ政権時代に回帰するだけではないことを示さなければというプレッシャーを受けることになろう。オバマ政権によるアプローチについては、ルールに従って行動するよう中国政府を何とか説得するという甘い考えによるものだったという批判が一部に見られるからだ。

戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・グレーザー氏は、バイデン政権は中国政府との公式対話の泥沼にはまることのないよう注意するべきだと話す。「中国は結果よりもプロセスを重視することに長けている」とグレーザー氏は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ大統領、金利据え置いたパウエルFRB議長を

ワールド

キーウ空爆で8人死亡、88人負傷 子どもの負傷一晩

ビジネス

再送関税妥結評価も見極め継続、日銀総裁「政策後手に

ワールド

ミャンマー、非常事態宣言解除 体制変更も軍政トップ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 3
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中