最新記事

アメリカ経済

コロナ禍で米富裕層はますます豊かに 苦しい労働者が「逆支援」

Billionaires Have Gotten Almost $1 Trillion Richer During Pandemic

2020年11月20日(金)14時48分
ジェイソン・レモン

2016年12月、大統領就任前のトランプとIT企業トップの話し合いのためトランプタワーに入るベゾス(中央) Andrew Kelly-REUTERS

<好業績を上げながらそれを労働者に還元しない企業のせいでアメリカの格差はますます拡大しているとシンクタンクが指摘>

経済格差とそれが地域社会の健康に及ぼす影響について調べた新たな報告書が発表され、アメリカの億万長者の資産総額がコロナ禍で1兆ドル近く増えたことが分かった。それも、コロナ禍で収入が減ったり失業した多くのアメリカ人が固唾を飲んで見守るコロナ支援策の第二弾が議会で停滞する一方でだ。

シンクタンク「政策問題研究所」が労組や地域団体などのネットワーク「社会正義のための団体交渉」、非営利組織「ユナイテッド・フォー・リスペクト」と合同で11月18日に発表した報告書によれば、「アメリカの億万長者647人の資産総額は、3月半ば以降で9600億ドル近く増加」した。さらに3月以降、アメリカでは新たに33人の億万長者が生まれているという。

政策問題研究所の格差担当ディレクターであるチャック・コリンズは本誌に対し、「低所得層の所得水準を積極的に引き上げ、中間所得層を拡大しつつ、一握りの億万長者と共存していく経済をつくることは可能かもしれない」とした上で、次のように述べた。「だが実際には、億万長者だけがますます豊かになっている。パンデミックがはじまって以降、彼らの資産総額は1兆ドル近く増えて、純資産総額は4兆ドル近くに達している。これは経済政策の失敗を意味している。社会の富のあまりに多くが、ごく一部の人に集まっている」

格差を悪化させた「罪深き12社」

報告書は、12の企業がアメリカ社会の「不平等を急拡大」させたと指摘(報告書は「罪深き12社」と呼んでいるが、なぜか14社ある)。小売大手のウォルマート、アマゾン、ターゲット、ダラー・ツリー、ダラーストア、食品関連のインスタカートやタイソン・フーズ、投資会社のブラックロック、レオナルド・グリーン・パートナーズ、ブラックストーン、コールバーグ・クラビス&ロバーツ、サーベラス・キャピタル、BCパートナーズとCVCキャピタル・パートナーズだ。

「これらの企業は好業績をあげているが、それがコロナ禍で働いている労働者たちの給与引き上げや労働環境の改善につながっていない」と報告書は説明。「これらの企業に雇われている大勢のエッセンシャル・ワーカーは今も、感染の危険にさらされている状態だ。彼らは日々、命を危険にさらして、既に法外な金額に達している企業利益を増やすために働いている」と指摘した。

米連邦議会の左派の議員たちは、これまでも繰り返し、格差の拡大に懸念を表明してきた。民主党のバーニー・サンダース上院議員は、億万長者や企業を厳しく批判してきており、19日には次のようにツイートした。「納税者のほうが、アメリカで一番儲けている富裕層や企業を支援しているのが現状だ。これは道徳的におかしいし、変えなければならない。労働者が生活していけるだけの収入を得られるようにする必要がある」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

FRB理事候補ミラン氏、政権からの利下げ圧力を否定

ワールド

ウクライナ安全保証、26カ国が部隊派遣確約 米国の

ビジネス

米ISM非製造業指数、8月は52.0に上昇 雇用は

ビジネス

米新規失業保険申請、予想以上に増加 労働市場の軟化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 2
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害」でも健康長寿な「100歳超えの人々」の秘密
  • 3
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 4
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 7
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 8
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 9
    SNSで拡散されたトランプ死亡説、本人は完全否定する…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中