最新記事

バイデンのアメリカ

党内左派の人事でバイデンの力量が試される、「妥協はバイデンの持ち味」

BIDEN’S FIRST 100 DAYS

2020年11月20日(金)06時45分
スティーブ・フリース

民主党内の進歩派も厄介な存在 ANDREW KELLY/GETTY IMAGES

<新大統領就任を確実にしたバイデンは、オカシオコルテスなど身内の動きにも留保する必要がある。閣僚名簿はどうなるか。現実路線・調整型の前副大統領は内政・外交・経済でどんな一手を繰り出すのか>

(本誌「バイデンのアメリカ」特集より・後編)

※前編:バイデン選挙公約実現のカギは、同い年の共和党重鎮ミッチ・マコネル より続く

そう、バイデン政権は身内の動きにも留意する必要がある。厄介なのは民主党内の左派勢力だ。今回の選挙が終わった翌日にも、中道派の元上院議員クレア・マカスキルと左派の新星アレクサンドリア・オカシオコルテス(通称AOC)下院議員が火花を散らす「事件」があった。

現在のマカスキルはMSNBCのコメンテーターを務めており、今回の選挙で民主党が下院で議席を減らし、上院でも過半数に届かなかったのは銃規制の強化や人工妊娠中絶の権利擁護、LGBTの権利拡大といった進歩的主張にこだわり過ぎたせいだと論評した。
20201124issue_cover200v2.jpg
するとAOCが、すぐさまツイートで反論した。「選挙に負けた人たちが、まるで選挙のプロみたいに説教してる。私たち、そんなの聞きませんから」

バイデン政権の閣僚名簿は

多くのリベラル派の活動家は、自分たちが望む法案を成立させるにも限界があるという現実を理解している。しかしバイデンが新大統領として閣僚などを指名する際には進歩派の人材を何人か選んでほしいと願っている。そして共和党を説得して、上院での承認を獲得してほしいと。

なにしろ閣僚には大きな権限があり、議会を飛び越してさまざまな規制を導入できるからだ。

まず、ひと波乱起きそうなのは財務長官選びだ。進歩派はマサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン上院議員を推している。しかしバイデンの側近たちは、ウォーレンが閣僚に転出して上院に空席ができる事態を懸念している。その場合、空席を埋める補欠議員の指名権限は州知事で共和党のチャーリー・ベーカーにあるからだ。

だが同州議会の民主党は、そうしたケースを見据えて布石を打っている。補欠議員を辞任した議員と同じ党から選ぶことを知事に義務付け、160日以内の特別選挙も求める法案だ。提出されれば、この法案は直ちに可決される。

そうなれば、バイデンとしては、不本意ながらも自分を応援してくれた進歩派に対する感謝の印にウォーレンを要職に就けなければならないだろう。恩返しを拒めば、左派の反発を招くのは必至だ。

ウォーレン以外に思い浮かぶ進歩派の有力者と言えば、ステイシー・エイブラムス(司法長官候補)、アトランタ市長のキーシャ・ランス・ボトムズ(住宅都市開発長官候補)らだ。

しかし、おそらく指名されるのは穏健派だろう。ミネソタ州のエイミー・クロブチャー上院議員は司法長官に、インディアナ州サウスベンド前市長のピート・ブティジェッジは国連大使に名が挙がっており、ヒューレット・パッカードの元CEOでカリフォルニア州知事選に共和党から出馬して敗退したメグ・ホイットマンが商務長官に指名される可能性もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-ボストン連銀総裁、積極的利下げ

ワールド

トランプ氏、ガザ・ウクライナ紛争継続に言及 軍幹部

ワールド

米の対中関税率55%は「適切な現状」=USTR代表

ビジネス

ファイザーと薬価引き下げで合意、関税減免と引き換え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 3
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かった男性は「どこの国」出身?
  • 4
    10代女子を襲う「トンデモ性知識」の波...15歳を装っ…
  • 5
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 6
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 7
    カーク暗殺の直後から「極左」批判...トランプ政権が…
  • 8
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    博物館や美術館をうまく楽しめない人は...国立民族学…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 3
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒りの動画」投稿も...「わがまま」と批判の声
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 8
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中