最新記事

2020米大統領選

さらにエスカレートするトランプの「コロナ詐欺」

'Where's the Vaccine?' Doctors Blast Trump's Election Day COVID Promises

2020年11月2日(月)18時16分
ベンジャミン・フィアナウ

11月1日、アイオワ州で遊説するトランプ大統領。口から出任せのワクチン楽観論に専門家は辟易している。 Carlos Barria-REUTERS

<ワクチンはすぐできる、感染拡大は医師の金儲けなど、口だけで何も対策を取らないうちに、アメリカの1日の新規感染者数はついに世界一になり、10万人が目の前に>

大統領選挙の投票日までには新型コロナウイルスのワクチン摂取を受けられるようになる――アメリカのドナルド・トランプ大統領とその側近たちは何カ月も前からそう主張してきた。だが11月3日の投票日を目前に、専門家らはこの主張も選挙目当ての虚偽の公約だったのではないかと指摘している。

トランプやコロナ対策責任者であるマイク・ペンス副大統領が、コロナワクチンは「まもなく」手に入ると言い始めたのは3月第1週のことだった。だが投票日を目前にした10月30日、アメリカは1日あたりの新規感染者数で世界最多を記録。同じ日、米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長を初めとする専門家からは、ワクチンは投票日には間に合わないだろうと指摘する声が上がった。あるワクチンの研究者はトランプの公約について「恐ろしい」と言った。

トランプは9月7日、「ワクチンはまもなく手に入る。大事な日に間に合うかも知れない。何の日のことかは分かるだろう」と述べるとともに、米食品医薬品局(FDA)や米疾病対策センター(CDC)の専門家が政治的な意図から投票日に間に合わないように工作していると批判した。

名付けて「ワープスピード作戦」

ワクチンの早期実用化に向けトランプ政権は光より速い「ワープスピード作戦」をぶち上げたが、ファイザーなどの製薬会社は9月上旬、安全性確保のためには臨床試験に時間をかける必要があるとの立場を表明。医療関係の研究機関、米スクリプス研究所のエリック・トポル教授(分子医学)も、投票日までにワクチンを流通させるというトランプの公約は「ほぼ実現不可能」と指摘した。ちなみにファイザーは10月、ワクチンの緊急許可申請は11月後半以降になると明らかにしている。

テキサス小児病院ワクチン開発センターの共同所長を務めるピーター・ホテズは8月、ワクチンの接種規模を臨床試験の数十人からいきなり3億人の全アメリカ国民へと拡大できると思うのはばかげていると指摘。「『ワープスピード作戦』からはほとんど意義など感じられないし、それが現実になったらかえって恐ろしい」と彼は述べた。

トランプは投票日前のワクチン実用化を実現できなかった場合の責任を、多くの専門家に転嫁してきた。FDAやCDCのロバート・レッドフィールド所長(『混乱している』とトランプから批判された)の他、「ディープステート(闇の政府)」もやり玉に挙げた。

11月30日にはミシガン州での遊説で、医師たちが新型コロナによる死者数を過大報告して金儲けしようとしていると言い出して医師を敵に回した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=小反発、ナスダック最高値 決算シーズ

ワールド

トランプ氏、ウクライナ兵器提供表明 50日以内の和

ワールド

ウへのパトリオットミサイル移転、数日・週間以内に決

ワールド

トランプ氏、ウクライナにパトリオット供与表明 対ロ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中