最新記事

イギリス

イギリス版Go To Eat、コロナ流行拡大の原因だった──英調査結果

2020年11月2日(月)16時45分
松丸さとみ

外食産業への支援策ではあったが...... REUTERS/Paul Childs

<日本のGo To Eatに似た外食産業への支援策「Eat Out Help Out」(外食をして支援しよう)キャンペーンがイギリスで行われていたが、新たに発生した新型コロナのクラスターのうち、8~17%は同キャンペーンに起因するものだった...... >

利用者が多い地域ほど感染者増加

英国で夏の間に行われていた、日本のGo To Eatに似た外食産業への支援策「Eat Out Help Out」(外食をして支援しよう)キャンペーンは、英国における新型コロナウイルス感染症の第2波の一因となっていた──英ウォーリック大学は10月30日、このような調査結果を発表した。

同キャンペーンが新型コロナ感染拡大に与えた影響について調査を行ったのは、ウォーリック大学の経済学者、ティモ・フェッツァー准教授だ。報告書では、新たに発生した新型コロナのクラスターのうち、8~17%は同キャンペーンに起因するものだったとしている。

また、Eat Out Help Outのキャンペーンに参加したレストランでは、2019年と比べ来店者数が10~200%増加したことが分かった。しかしキャンペーン終了後にはレストランの客足も激減したため、経済効果は長く続かなかったとも報告書は指摘している。

フェッツァー准教授は調査にあたり、参加レストランを検索できるプログラムにデータを提供している英国歳入関税庁(HMRC)のウェブサイトからのデータを使用。また、統計局から出される週ごとの新型コロナウイルス感染者データをもとにした。

同准教授はさらに、Eat Out Help Outと感染者数の多い地域との関連性を示すために、降雨データとグーグルのコミュニティ・モビリティ・レポートを分析。同キャンペーン展開期間中(8月の月~水)のランチタイムとディナータイムに雨が降った地域では、天気が良かった地域と比べてレストランの客足も減り、新規感染者も少なかったことが示されたという。

調査ではさらに、キャンペーン参加のレストランが多い地域では、キャンペーン開始から1週間ほどしてから、新規の新型コロナ感染者のクラスター発生が顕著に増加し、 キャンペーン終了に伴いクラスターの発生も著しく減少したことが分かった。

費用対効果に疑問

Eat Out Help Outは、新型コロナ感染症から打撃を受けた外食産業を支援する経済策として、8月の月~水に対象の飲食店で食事をすれば、飲食代(アルコールを除く)の最大50%分を政府が負担するというものだった(上限1人10ポンドの制限はあるが、利用できる回数に上限はない)。

フェッツァー准教授によると暫定値では、参加店舗は8万4000店で1億食分近くが支援され、平均の申請額は5.25ポンド(約700円)だった。

フェッツァー准教授は、今回の調査から、Eat Out Help Outと新型コロナの新規感染には因果関係があることが示唆されたと述べた。さらに、政府が助成金を出して第2波の一因を作った「見せかけだけの経済」(一見経済的かのように見せて結局もっとお金がかかること)であった可能性がある、と厳しい言葉で表現した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 120億ドル

ビジネス

FRB追加利下げは慎重に、金利「中立水準」に近づく

ビジネス

米雇用市場のシグナル混在、減速の可能性を示唆=NE

ワールド

中国、レアアース問題解決に意欲 独財務相が何副首相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 7
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中