最新記事

台湾海峡

台湾で米軍と合同訓練、40年ぶりに実施を認める

Taiwan Admits U.S. Troop Exercise for First Time in 40 Years

2020年11月11日(水)17時10分
ジョン・フェン

ハワイで上陸作戦の訓練を行う米海兵隊(2016年) Hugh Gentry-REUTERS

<台湾における米軍の存在が明らかにされたのは、1979年の国交断絶以来>

米海兵隊が台湾で公式に訓練活動を開始した。台湾海軍が11月9日に明らかにした。台湾軍の戦闘即応性強化を支援する目的の訓練だ。

台湾を訪れている米海兵隊特殊作戦コマンド(マリーン・レイダース)の一団が主導する水陸両用作戦の訓練について、台湾の海軍司令部は「定期的なもの」と表現した。台湾における米軍の活動が公式に明かされたのは、台湾とアメリカの外交関係が公式に断絶した1979年以来初めてのことだ。

台湾日刊紙「聯合報」の報道によれば、台湾の海軍陸戦隊に所属する兵士は、マリーン・レイダースの指導のもとで4週間の訓練を受け、水陸両用作戦や、高速モーターボートでの侵入テクニックを身につけるという。

今回の訓練は、台湾南西部の港湾都市、高雄市にある左営基地でおこなわれると同紙は報じている。

マリーン・レイダースは10月26日には台湾に到着したとみられるが、台湾の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、2週間隔離されて経過観察を受けていた。

8か月前に新型コロナウイルスの流行が始まって以来、台湾と合同軍事訓練を実施する同盟軍は米海兵隊が最初だと同紙は伝えている。

台湾海軍は公式ウェブサイトに掲載された声明のなかで、「地域の平和と安定を維持するため、台湾軍と米軍による定例の合同訓練を進めている」と述べた。

台湾の海軍司令部は、訓練に関する詳細はいっさい明らかにしていない。

圧倒的にトランプ支持だった市民

台湾における米軍の活動が公式に明かされるというきわめてまれな事態が起きたのは、アメリカのテレビネットワーク各社が大統領選における民主党のジョー・バイデンの勝利を伝えた数日後のことだ。

ドナルド・トランプ大統領はまだ敗北を認めず、選挙結果に異を唱えているものの、中国に対する強硬姿勢や台湾の蔡英文政権とのあいだで交わした数十億ドル規模の武器売却の契約を理由にトランプの再選を圧倒的に支持していた台湾市民のあいだでは懸念が生じている。

11月3日の大統領選挙当日に米国防総省が発表した直近の武器売却では、台湾が軍用無人機(ドローン)「リーパー(Reaper)」を6億ドルで購入した。

40年以上にわたって、米台どちらの政府も台湾における米軍の存在を正式には認めてこなかったが、米台の軍事交流は新型コロナ流行以前から定期的におこなわれていたと「聯合報」は伝えている。

台湾が毎年実施している「漢光(Han Kuang)」演習には、アメリカ政府のオブザーバーが招かれている。また、米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)も、台湾における同様の部隊である陸軍航空特戦指揮部との毎年恒例の合同訓練に招かれている。

「聯合報」によれば、米陸軍特殊部隊は、台湾中央部の山岳地域で実施されている「バランス・タンパー(Balance Tamper)」演習に参加しているという。

また、米海軍特殊部隊(ネイビーシールズ)も毎年「フラッシュ・タンパー(Flash Tamper)」演習に参加し、澎湖諸島沖で台湾の潜水工作兵を訓練している。

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領府長官が辞任、和平交渉を主導 汚職

ビジネス

米株式ファンド、6週ぶり売り越し

ビジネス

独インフレ率、11月は前年比2.6%上昇 2月以来

ワールド

外為・株式先物などの取引が再開、CMEで11時間超
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 10
    バイデンと同じ「戦犯」扱い...トランプの「バラ色の…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中