最新記事

アメリカ政治

バイデン、政権1年目に直面するFRB人事とは

2020年11月15日(日)11時31分

米大統領戦で勝利を確実にしたバイデン前副大統領は、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長(写真)を再任すべきか否かを含め、FRBにどの程度変化を求めるかの判断を政権1年目に迫られそうだ。米議会で9月代表撮影(2020年 ロイター)

米大統領戦で勝利を確実にしたバイデン前副大統領は、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長を再任すべきか否かを含め、FRBにどの程度変化を求めるかの判断を政権1年目に迫られそうだ。

民主党内の進歩主義派はさらに大幅なFRB改革を求める可能性が高く、バイデン氏はこの要求を検討する必要が出てくる。民主党の綱領には、金融政策において人種間の資産格差等への目配りを強化するようなFRB改革が含まれるからだ。パウエル議長がそうした点で適任かどうかについてもバイデン氏は判断を迫られる。

金融規制の強化を求める勢力からもパウエル氏の続投に反対する声が上がるかもしれない。民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員はそうした主張の急先鋒で、2018年にはパウエル氏の議長任命に反対した。


パウエル議長の任期は2022年2月に終わる。メロンの首席エコノミストで元FRB高官のビンセント・ラインハート氏によると、バイデン氏を大統領に推した勢力は多種多様で、同氏はそれぞれの要求のバランスを取るため、パウエル議長の任期終了時に人事によってFRBに自身の刻印を押したいと望む可能性がある。民主党には豊富な経済専門家集団がいるとラインハート氏は言う。

その1人であるブレイナードFRB理事は、パウエル議長の後任もしくは次期財務長官の候補に名前が挙がっている。またアトランタ地区連銀のラファエル・ボスティック総裁は、黒人初の地区連銀総裁であり、経済公正性などの問題についてFRB内で影響力を高めている。バイデン氏が副大統領だった時期には住宅都市開発庁の次官補を務めた。

最も抵抗の少ない候補

とはいえ、パウエル議長が続投に向けて不利な立場にあるわけではない。FRBを手堅く運営し、新型コロナウイルスの大流行に力強く対応しただけでなく、波乱に満ちたトランプ米大統領との関係もうまく乗り切ってきた。これは議会で民主、共和両党の支持を構築できたことが一因だ。

上院で共和党が過半数を維持し、バイデン氏が指名した人事の承認権を同党が握ることになった場合、議会におけるこの「同盟」がパウエル氏の資産となるかもしれない。共和党のパウエル氏(67)はバイデン氏と同じく穏健派で、超党派的な考えを持ち、ワシントンの機関の中で良く知られた存在だ。

コーナーストーン・マクロのアナリスト、ロベルト・ペルリ氏は最近、パウエル氏は「最も抵抗の少ない候補になるだろう」と記した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中