最新記事

アメリカ政治

バイデン、政権1年目に直面するFRB人事とは

2020年11月15日(日)11時31分

こうした構図を差し引いても、パウエル議長が行った金融政策改革は、ボルカー元議長が1970年代末から80年代初頭にかけてFRBをインフレ退治の方向に軌道修正して以来、最も重要な改革の1つだったと言える。FRBの責務の順番を入れ替え、1番目を雇用促進に、2番目をインフレとの闘いにしたのだ。

この新しい枠組みが夏に公表されると、進歩主義派のエコノミストや労働組合幹部から賞賛を浴びた。バイデン氏の経済顧問トップ、ジャレッド・バーンスタイン氏は、新しい枠組みについて「耳に心地良い」と述べた。

副議長の任命

クラリダ、クオールズ両FRB副議長もバイデン次期政権の1年目に任期を迎える。クラリダ氏はエコノミストとして尊敬されており、FRBの戦略見直しをうまく司った。バイデン政権が金融規制強化を進めるなら、銀行監督担当のクオールズ氏は3人の中で続投の可能性が最も低いかもしれない。

トランプ氏はFRBの新理事2人を指名し、上院の承認待ちとなっている。しかし1月に現体制を終える上院が、それまでに承認するかどうかは不明だ。承認しなければバイデン氏はこの2ポストも埋めることになる。

このほか、FRBが金融政策を分析する際の基準に人種間資産格差や雇用の数値といった項目を盛り込ませるか否か、また盛り込むならどのような方法にするか、といった問題についても、バイデン氏は選択を求められる。

コロナ緊急プログラム

バイデン氏は、より短期的な問題にも直面するかもしれない。

新型コロナ禍で導入されたFRBの緊急貸し出し措置の多くは12月31日に期限切れとなり、延長にはトランプ政権の承認が必要になりそうだ。

FRB幹部らは、こうしたプログラムが金融市場の正常な動きを支えたと感じており、仮にトランプ氏が承認を拒めば、少なくともバイデン氏就任までの数週間は問題の火種になる恐れがある。

パウエル議長は先週、バイデン氏の大統領選勝利が確実になる前の段階で開いた記者会見で、米経済に緊急措置解除の準備が整っているかどうかについて、FRBはまだ結論に至っていないと説明した。

(Howard Schneider記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・アメリカ大統領選挙、敗残のトランプを待ち構える訴訟の山 検察による刑事捜査も
・巨大クルーズ船の密室で横行する性暴力


202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中