最新記事

健康

寒中水泳が認知症予防に効果あり? 英研究

2020年10月21日(水)16時50分
松丸さとみ

北ロンドンの屋外プール「パーラメント・ヒル・リド」の冬季水泳大会...... REUTERS/Toby Melville

<冷たい水の中での水泳が、認知症などの神経変性疾患の発症を遅らせる可能性があることが分かった......>

「低温ショックタンパク質」が鍵

英ケンブリッジ大学の研究者らが行った研究で、冷たい水の中での水泳が、認知症などの神経変性疾患の発症を遅らせる可能性があることが分かった。冷水の中で泳ぐことで、低温ショックタンパク質(RBM3)が体内に生成され、これが認知症の発症を遅らせると考えられている。

英公共放送BBCや英紙インディペンデントなどが報じた。BBCによると、この研究はオンラインで公開されているものの、医学誌などでは未発表だという。

今回の研究は、英国認知症研究所の拠点のうちケンブリッジ大学にあるセンターのディレクターを務める、ジオヴァナ・マルッチ教授が率いるチームが行ったもの。まだ研究段階としては初期であるものの、認知症の治療の一助になるのではないかと期待されている。

なおケンブリッジ大学の認知症研究チームは2015年、マウスを使った実験を行い、低体温になったマウスからRBM3が検出されたことや、そうしたマウスではシナプス(神経細胞間の結合部)が再建されたことを発見していた。

寒中水泳を楽しむスイマーの協力を得て

今回の研究のきっかけは、マルッチ教授がBBCラジオ4の番組『トゥデイ』に出演したことだった。番組中で同教授は、人間の体でRBM3がどんな役割を果たすのかテストしてみたいが、倫理的なガイドラインがあるため、人を超低体温にする許可を得るのは非常に難しい、と話していた。

これを知ったスイマーのグループが、マルッチ教授に協力すると名乗り出たのだ。彼らが泳いでいたのは、北ロンドンにある屋外プール「パーラメント・ヒル・リド」で、冬季も温水にはならない。そこで、マルッチ教授らの研究者チームは2016年、2017年、2018年の冬の間、冷水の中で泳ぐスイマーたちを観察した。

スイマーの血中にあるRBM3の濃度を調べたところ、かなり多くの人たちの間で増加が見られた。スイマーの多くは、深部体温(脳や内臓など、身体中枢部の体温)が34度程度にまで下がっていたという。

また研究では比較群として、プールの隣で太極拳を行っている人たちのRBM3も調べた。太極拳の人たちは低体温にもなっておらず、RBM3の増加も見られなかった。つまり、水の中にいる際に体が冷えることが、人間の体内でのRBM3生成を促したと考えられている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、今後5年のミサイル開発継続を示唆

ワールド

ブラジル大統領選、ボルソナロ氏が長男出馬を支持 病

ワールド

ウクライナ大統領、和平巡り米特使らと協議 「新たな

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中