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日韓関係

日韓のビジネス往来再開したが、関係改善や経済の活性化には繋がらない

2020年10月13日(火)15時00分
佐々木和義

日韓のビジネス往来の再開は、関係改善につながると期待する声が上がったが......   Carl Court、Kim Min-Hee/REUTERS

<日韓のビジネス目的での往来が再開したが、日韓関係改善や経済の活性化に繋がらないという見方が広がっている......>

日韓両政府は、新型コロナウイルスの影響で中断していた入国制限を緩和することで合意し、10月8日からビジネス関係者の往来が可能となった。出国前に防疫手続きを取ると、隔離措置が免除され、相手国での経済活動が可能となる。

ビジネス関係者を対象とする往来の再開は、韓国が日本に打診してきた。菅義偉政権誕生から1か月で合意に達し、日韓関係改善の第一歩だと期待する専門家がいる一方、効果は一部にとどまり、関係改善や経済の活性化に繋がらないという見方が広がっている。

日本政府は2020年3月9日から韓国と中国からの入国制限を発表

これまでの経緯を振り返ってみる。2020年3月5日、日本政府は同月9日以降、韓国と中国からの入国者に対する入国制限を発表した。短期滞在者に認めていた査証免除を停止し、両国にある日本国大使館や総領事館が発給した査証の効力を停止した。また日本人を含む両国からの入国者には14日間の待機と交通機関の利用自粛を要請した。

韓国外交部は、日本大使館の相馬弘尚総括公使と冨田浩司駐韓日本大使を相次いで呼んで抗議し、日本人の入国を制限すると発表した。同9日から日本人の査証免除を中断し、発行済み査証の効力を停止した。また、外国人登録等が有効な人を除く日本旅券所持者には再申請を義務付けた。

自国民を含む入国者に制限を課した日本に対し、日本人のみを対象とした韓国政府の対応を批判する声が上がったが、韓国政府は4月1日から韓国人を含むすべての入国者に2週間の隔離を義務付けた。

査証によっては往来は可能だが、相手国を訪問すると入国から2週間、居住国に帰国した際に2週間、計4週間の隔離が必須となり、日韓の往来は事実上、中断した。

企業業績にプラスとなるか?

今回の合意で、相手国を訪問するビジネス出張者は、出国前に自国の検査で陰性判定を受けた確認書と滞在場所に関する証明書類を提出すると、提出範囲内で行動が可能となり、また、相手国に到着した後に再び陰性判定を受けると、帰国後の2週間の隔離が免除される。

往来の中断後、輸入した製品や部品等に不具合が発生したとき、責任者が現地を訪問して確認することができないなど、以後の取引を中止せざるを得ない事例が発生していたが、ビジネス往来の再開で、相手国への訪問が可能となった。ある在韓日系商社の商社員は、再開の報道と同時に日本の担当者とメールでやりとりしながら現地を訪問する段取りに追われ、てんてこ舞いの忙しさだという。

一方、ビジネス往来の再開が企業業績にプラスとなるかは疑問視する。韓国メディアの取材を受けた商社員は、日本の今年第2四半期国内総生産(GDP)が大幅なマイナスを記録したため、韓国製品の需要が伸びるとは判断できず、また、韓国も日本ほどマイナスは大きくないが、反日不買運動の余波で日本製品の韓国内の需要が拡大する期待も難しいと話している。

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