最新記事

イスラム過激派

フィリピン当局、自爆テロ志願の女を拘束 両親も自爆テロ決行で死亡

2020年10月12日(月)14時37分
大塚智彦(PanAsiaNews)

8月24日にホロ市内で起きたような自爆テロを未然に防ぐことができた。 写真はホロ市内で起きた自爆テロ現場。PEEWEE C. BACUNO via REUTERS

<両親と夫を「聖戦」で失った若い女は自らもその闘いに捧げようとしていたが>

フィリピンのイスラム系テロ組織「アブ・サヤフ」のメンバーを対象とした掃討作戦を続けている軍と警察の合同部隊は10月10日、フィリピン南部のホロ島で女性3人の身柄を確保した。

3人はいずれも「アブ・サヤフ」のメンバーとみられるフィリピン人女性2人とインドネシア人女性1人で、このうちインドネシア人女性は近く自爆テロを実行する予定だったとされている。

このインドネシア人女性の両親は2019年1月にホロ市内で起きた「マウント・カルメル教会」などのキリスト教会連続自爆テロ事件で死亡した実行犯のインドネシア人夫妻だった。

さらに彼女の夫も8月29日に治安部隊に殺害されたとみられ、これらの復讐のため自ら自爆テロを志願して近くテロを実行する可能性が極めて高いとして治安当局が最重要容疑者の1人として行方を追っていた人物だった。

また共に確保されたフィリピン人女性2人も「アブ・サヤフ」のメンバーと結婚した関係者で、テロ計画に何らかの関与が疑われるとして現在取り調べを受けているという。

夜明け前の潜伏先急襲で確保

フィリピンのメディアなどによると、10日の夜明け前に「アブ・サヤフ」に関連する女性が潜伏しているとの情報を得た軍と警察、情報機関などからなる「統合作戦チーム」がホロ島の民家を急襲して、女性3人の身柄を確保した。

この民家は確保されたフィリピン人女性の1人インダ・ヌルハイナ容疑者の夫で「アブ・サヤフ」の地域リーダーとされるベン・タト容疑者が所有するもので、「アブ・サヤフ」関係者の隠れ家だったとみられている。

それを裏付けるようにこの民家からはパイプ爆弾が装着された自爆用のベスト、爆薬、起爆装置など多数の自爆テロ実行に必要なものが押収されたという。

フィリピン軍情報部が得た情報では、確保されたインドネシア人女性はレスキ・ファンタシャ・ルリー容疑者(別名シシ)。10代後半から20代前半とみられ、両親、夫を自爆や銃撃戦で失い、その復讐とイスラム教の「聖戦(ジハード)」という使命感から自爆テロ実行を志願。近く犯行に及ぶ予定だったとされる。そのため情報機関は行方を必死に捜索していたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ロ首脳が電話会談、プーチン氏はウ和平交渉巡る立場

ワールド

ロ、ウ軍のプーチン氏公邸攻撃試みを非難 ゼレンスキ

ワールド

中国のデジタル人民元、26年から利子付きに 国営放

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、11月は3.3%上昇 約3年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中