最新記事

動物

嗅覚で地雷を見つけ出すネズミ、慈善団体から表彰 コロナ検知の可能性も?

2020年10月2日(金)15時30分
松丸さとみ

化学物質のにおいを嗅ぎ分けるヒーローラッツ...... PDSA-YouTube

<英国の獣医による慈善団体PDSAは、命がけで人命などを救う活躍をした動物に、「PDSA金メダル」を授与している。今回は地雷撤去作業を行うアフリカオニネズミの「マガワ」が受賞した......>

犬が独占していた金メダル、ネズミが初受賞

カンボジアには、内戦時に埋められた地雷が、いまだに数多く残っている。撤去のための活動が現在も続けられているが、1匹の小さなヒーローがこのほど、カンボジアでの地雷撤去の活躍を称えられ、表彰された。

英国の獣医による慈善団体PDSAは2002年以降、命がけで人命などを救う活躍をした動物に、「PDSA金メダル」を授与している。これまで金メダルを与えられてきたのはすべて犬だったが、今回はアフリカオニネズミの「マガワ」が、地雷撤去作業におけるその「救命への勇気と職務への献身」を称えられることとなった。ネズミに金メダルを授与したのは、PDSA77年の歴史で初めてだという。

PDSAによると、マガワがカンボジアで地雷探知活動を始めて5年になる。これまで作業した広さは14万1000平方メートル、サッカーピッチにして22面分になる。見つけた地雷の数は39個、不発弾は28個に上る。

テニスコート1面分の広さで地雷を探す場合、人の手であれば金属探知機を使用して最大4日かかるところだが、優れた嗅覚を持つマガワの場合、30分で作業を終えられるという。

マガワは引退間近だが、PDSAによるとしばらくはカンボジアで作業を続け、引退したら残りの日々は、ケージの中で遊んだりのんびりしたりして過ごす予定だという。

化学物質のにおいを嗅ぎ分けるヒーローラッツ

マガワを訓練したのは、ベルギーに拠点を置くAPOPOという慈善団体だ。大型で嗅覚の鋭いアフリカオニネズミを、地雷や結核感染者の探知に向けて訓練することを専門にしている。訓練はアフリカで行っており、マガワもタンザニアで生まれた。

マガワのような地雷を探し出すネズミは、ヒーローラッツと呼ばれている。ネズミは体が小さく軽いため、安全に地雷原を歩くことができる。地雷原にある金属くずには目もくれずに、地雷に使用されている化学物質を嗅ぎ分け、ハンドラーに知らせる。

PDSAによると、カンボジアには地雷が原因で手足を切断された人が4万人以上おり、これは人口あたりで世界最多となる。マガワが地雷を1つ見つけるたびに、人命1人救ったことになるため、マガワの活躍はカンボジアの人たちに直接的な影響を与えている、とPDSAは説明している。

同団体のジャン・マクローリン会長は英紙ガーディアンに対し、「カンボジアには、1975~1998年の間に、国中に推定400万~600万個の地雷が埋められ、悲しいことにこれまで6万4000人が死亡した」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは156円前半でほぼ横ばい、日銀早期

ビジネス

中国万科の社債急落、政府支援巡り懸念再燃 上場債売

ワールド

台湾が国防費400億ドル増額へ、33年までに 防衛

ビジネス

インフレ基調指標、10月の刈り込み平均値は前年比2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中