最新記事

エジプト

LGBTQを拷問と性的虐待で痛めつけるエジプト警察

Egyptian Police Using Social Media to Trap and Rape Suspected LGBTQ People

2020年10月7日(水)18時35分
ダニエル・ビャレアル

「性的不道徳」の容疑で拘束した52人の男たちを裁判所に引っ立てる治安要員(2001年、カイロ) REUTERS

<警察はときにSNSでLGBTQを呼び出し、逮捕し、暴力の限りを尽くし、家族も就業機会も命も奪う>

エジプト警察と治安当局が、ソーシャルメディアを使ってLGBTQ(性的マイノリティ)ではないかとみられる人々を罠にかけて無実の罪を着せ、無期限に身柄を拘束して身体的・性的虐待を行い、必要な治療も受けさせていないという状況が明らかになった。

相次ぐ逮捕は、現在進行している、LGBTQの人々に対する、より大規模な取り締まりの一環とみられる。エジプトが合意している複数の国際人権条約はもちろん、エジプト憲法にも違反する行為だ。

国際的な非政府組織(NGO)「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」がまとめた新たな報告書は、2017年から2020年の間に逮捕された15名の証言を引用している。彼らには、「放蕩」や「売春」といった漠然とした容疑がかけられていたが、このような何とでも解釈できる容疑は、LGBTQではないかと疑われた人々に難癖をつける口実として、世界各国の警察によってかなり以前から用いられてきたものだ。

人間ではない扱い

一部のケースでは、治安当局が、同性愛者向けのソーシャルアプリ「グラインダー(Grindr)」や、フェイスブックやワッツアップなどのソーシャルメディア・プラットフォームを用いて、LGBTQではないかと疑いをかけた人々に接触し、公共の場におびき出して捕まえていた。逮捕された複数の人物の証言によると、警察は、こうした人々の携帯電話にポルノ画像を仕込み、わいせつ罪の嫌疑をかけたという。

HRWの聞き取り調査に応じた15名は一様に、裁判が始まるまで数日から数カ月にわたって警察に身柄を拘束されたと述べている。その間、多くの場合は狭く衛生状態の悪い場所に閉じ込められ、取調官から侮辱されたり殴られたりしたという。15名のうち8名は、警察から性的暴行を受けたと証言しているほか、4人は必要な治療が受けられず、8人は警察から供述書への署名を強要され、供述書の内容を署名前に読むことすら許されなかったケースも多かったという。

逮捕された25歳の男性、サリム(仮名)によると、警察はサリムの両手両足を1つにしばり、監房で3日間にわたって放置したため、服を着たまま繰り返し排泄することを余儀なくされたという。身柄を拘束されている間、警察からは、自身の容疑に関する説明はなかったとのことだ。さらに警察は、こうした取り扱いについて誰かに話したら「二度と日の目を見られなくなる」と、サリムを脅したという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米製造業新規受注、9月は前月比0.2%増 関税影響

ワールド

仏独首脳、米国のウクライナ和平案に強い懐疑感 「領

ビジネス

26年相場、AIの市場けん引続くが波乱も=ブラック

ワールド

米メタ、メタバース事業の予算を最大30%削減と報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 8
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 9
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中