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韓国メディアに激震 テレビ局CM売上激減、ニュース番組が導入したプレミアムCMとは

2020年10月5日(月)19時15分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

地上波局は規制が厳しいと訴え

視聴者の反感を買ってまで、地上波のニュース番組がPCM導入を踏み切った背景には、地上波放送局の財政難がある。地上波4局は、総合編成放送局やケーブル放送局との競争の中で、地上波だけが規制にがんじがらめになっていると訴え続けている。

ここ5年間の地上波4社のPCMによる収益は、2919億ウォンと推算される(国民の力党調べ)。 という事は、通常PCM単価は一般広告より1.5〜2倍高いとされ、財政難に苦しむ地上波放送局は、苦肉の策としてPCM枠を切り売りしていくしかないと考えているようだ。

広告、ニュースともにYouTubeにさらわれて

財政難の根底にあるのは、視聴者の地上波離れ・テレビ離れだろう。去年5月、地上波放送局MBCの労働組合が出した声明文が発端となり、「MBCの収益をたった1人で超えた6歳のユーチューバー」というニュースが報道された。

労働組合は、「地上波放送局であるMBCの広告売り上げが、6歳の子供のユーチューブチャンネル"ボラム・チューブ"の広告収益とほぼ同額である。MBCは、経営危機ではなく生存危機が近づいている」と発表した。その後、ボラム・チューブの売上が実際にはMBCよりもかなり少ないことが判明したが、放送局の危機感は今も変わってはいない。

またユーチューブといえば、韓国ではかつてメディアに在籍していたことのあるフリーの記者がユーチューブ上で独自のニュース番組を始めて人気を集めている。PCMなど企業広告が多く入ってしまうと、報道の信ぴょう性が疑われ、今後ユーチューブ・ジャーナリストの方が真実を報道しているという認識が広まっていく可能性もある。そうなると、ますますテレビ離れは加速し、地上波ニュース番組は悪循環に陥ってしまうだろう。

韓国の地上波放送局は、ニュース番組のPMC導入という大きな一歩を踏み出した。これがさらなる地上波離れに繋がらないといいが、そうならないためには単純に目先の広告費を稼ぐためにPMCをどんどん増やすだけではなく、より魅力的な番組作りに向けた改革にも力を入れる必要があるだろう。

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