最新記事

香港

中国当局に海上拘束された香港デモ参加者 家族に残された手紙に記された想いは

2020年9月28日(月)19時10分

ウォン・ワイインさんの妻は、夫からの短い別れの手紙を読み、最悪の事態を恐れた。写真は香港での記者会見に臨む、ウォンさんの妻(中央)ら拘束された12人の家族・親族。12日撮影(2020年 ロイター/Tyrone Siu)

ウォン・ワイインさんの妻は、夫からの短い別れの手紙を読み、最悪の事態を恐れた。

「長年、私と一緒にいてくれて、申し訳ないとともに感謝している」 自宅のデスクで発見された手書きのメモには、そう書いてあった。「もうあなたたちと一緒にいることができない──どうか元気でいてください」

失業中の船舶修理工である30歳のウォンさんは、昨年香港を揺るがせた抗議行動への参加をめぐって刑事訴追を受けていた。妻と母親宛てに残されたメッセージは、ノートから破り取られたページに走り書きされていた。

彼は、粗末な家の修理をしないまま去ることを詫びていた。「あいかわらず家の屋根を修理する時間が取れない。でも、そのチャンスはもう訪れないかもしれない」と彼は書いている。

ウォンさんの妻と母親は、彼が自殺したのではないかと心配して必死に捜し始めた、とロイターに語った。

だが、2人がウォンさんの置き手紙を読んだ頃、彼はすでに中国当局に拘束されていた。その前夜、抗議行動を理由とする起訴を免れようとして他の活動家11人とともにボートで台湾に脱出する試みは失敗に終わった。

「夫がまだ生きていると聞いて、勇気づけられた」とウォンさんの妻は言う。彼女は夫の置き手紙の一部を記者に教えてくれた。手紙は警察に証拠として押収され、その後は何の説明もないという。ロイターは捜査について香港警察に問い合わせたが、回答は得られていない。

「でも、すぐにとても心配になってきた」とウォンさんの妻は言う。夫が中国本土で拘置されていることを知り、公正な処遇を受けていないのではないかと恐れたからだ。悪夢にうなされて起きてしまうことも多い、と彼女は言う。センシティブな状況ゆえに、彼女も母親もフルネームを明かさないよう求めている。

失敗した台湾への脱出

16歳の若者を含め、中国で拘置されている12人の活動家の一部の家族は、9月12日、身元を隠すためにマスクとフードを着用して記者会見に臨んだ。香港立法会議員2人に付き添われた家族らは、中国当局に対し、逮捕者が家族に連絡すること、外部の弁護士による代理を受けることを認めるよう嘆願した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米8月CB消費者信頼感指数97.4に低下、雇用・所

ビジネス

アップル、9月9日に秋のイベント 超薄型iPhon

ワールド

クックFRB理事、トランプ氏による解任巡り提訴へ 

ワールド

イーライリリーの経口肥満症薬、2型糖尿病患者で体重
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    「ありがとう」は、なぜ便利な日本語なのか?...「言…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中