最新記事

香港

中国当局に海上拘束された香港デモ参加者 家族に残された手紙に記された想いは

2020年9月28日(月)19時10分

中国外務省は逮捕者について分離独立主義者と位置付けており、中国領海に違法に侵入した容疑により、香港北部に接する本土の都市・深圳で拘置されていると述べている。

逮捕者についてロイターが香港行政府保安局に問い合わせたところ、広報担当のフローレンス・ウォン氏は、「(香港は)他の司法管轄当局による法執行を尊重し、干渉しない」と応じた。また同氏は、12人について、中国側での対応が終った後、送還を求めることになるだろうと話している。

林鄭月娥(キャリー・ラム)香港行政長官は22日に行われた記者会見で、記者団に対し、逮捕者は中国で司法の裁きを受けなければならず、香港側には、無罪推定や公正な裁判、弁護士による代理など固有の権利を要求する法的根拠がないと述べた。

高速艇で台湾に逃れようと試みて失敗し逮捕された12人のうち、10人は暴動、放火、警察襲撃の容疑をかけられている。また、新法に基づき外国勢力との共謀の容疑で起訴されている者も1人いる。

ウォンさんは、爆発物製造の容疑ですでに1月16日に逮捕されている。ここ1年ほどの間に、海路・空路で香港を離れた民主活動家・抗議参加者は数百人いるが、彼はその1人にすぎない。

8月23日の夜明け前、ウォンさんは男性10人、女性1人のグループとともに、静かな漁村に停泊していた高速艇に乗り込み、約600キロ離れた台湾に向けて出発した。気象条件に恵まれれば、1日もかからずに到着できる。

だがウォンさんらは途中で中国の沿岸警備艇に拿捕(だほ)され、中国当局によれば深圳の拘置所に送られた。

「生涯、夫の帰りを待つ」

ウォンさんは2014年、休日に訪れたベトナムで中国本土出身の妻と出会った。2人は香港に引っ越し、田畑に面した質素な家に暮らしていたが、それでも幸せだった、と彼女は言う。

妻によれば、1月にウォンさんが逮捕される前の生活はシンプルだったという。いずれはお金を貯めて日本に新婚旅行に行き、結婚式の写真を撮り直し、子どもも作りたいと夢見ていた。引退後は中国本土でマンションを買って暮らす予定だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国CATL、香港上場で少なくとも40億ドル調達へ

ワールド

新ローマ教皇「もう戦争やめよう」、初講話で世界の紛

ワールド

中国人民銀、米国との貿易戦争への対策で景気刺激策=

ワールド

イラン、ロシアに短距離ミサイル発射装置の移送を準備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 3
    「隠れ糖分」による「うつ」に要注意...男性が女性よりも気を付けなくてはならない理由とは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 8
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 9
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 10
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中