最新記事

誤解だらけの米中新冷戦

拡張主義・中国の「武力」を4カ国連携で封じ込めよ

CHINA ALONE

2020年9月18日(金)16時35分
ブラマ・チェラニ(インド・政策研究センター戦略問題研究家)

トランプ、安倍、モディの各首脳(2019年の大阪G20サミット) CARL COURT-POOL-REUTERS

<国際的評価を損ねた習政権が影響力を及ぼす手段は武力だけになった。「クアッド」の戦略的連携を深め、そのコストが高くつくと認識させるべきだ。本誌「誤解だらけの米中新冷戦」特集より>

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は今年の新年祝辞で、2020年は「里程標の意味を持つ1年」になると語った。この予言は的中したものの、あいにく習が描いていた形ではなかった。
20200922issue_cover200.jpg
この祝辞で習は「われわれの友は天下にあまねくいる」と胸を張ったが、そんなことはない。中国は国際的評価を損ね、友好国とも疎遠になり、影響力を及ぼす手段は1つしかなくなった。武力に訴えることだ。

後世の歴史家は2020年を分水嶺と見なすだろう。新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの国が中国頼みのサプライチェーンの危険性を思い知り、中国の共産主義体制への態度も変化した。特にインド太平洋地域で拡張主義的な姿勢を示していることで中国は孤立し、周辺国は対抗する準備を始めている。

日本は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカの機密情報共有の枠組みである「ファイブ・アイズ(5つの目)」との連携拡大を探り始めた。もし日本を加えた「シックス・アイズ」が成立すれば、インド太平洋地域の安全保障に重要な役割を果たすだろう。

「クアッド」と呼ばれるオーストラリア、インド、日本、アメリカの4カ国も、戦略的連携を深める構えだ。インドは近年、中国に協調的だったので、特筆すべき方向転換となる。

最近の中国はインドに対して攻撃的だ。4月下旬以降、中国軍がインド北部の係争地域で部隊を展開し、長年の領土紛争が再燃。これにより、インドのナレンドラ・モディ首相は対中戦略の変更を迫られた。

モディは今年、日米と毎年開催している海上演習「マラバール」に、オーストラリアの招待を検討している。オーストラリアはこの演習に2008年から参加していないが、インドは中国を刺激することを恐れて復帰の呼び掛けをためらっていた。オーストラリアが戻れば、クアッド4国がそろった海上演習の枠組みが成立する。

周辺主要国の戦略的な結び付きを深める次の一手は、より具体的な協力にならざるを得ない。問題は日米豪印の安全保障上の利益が必ずしも一致しないことだ。

もうご都合主義は通じない

インドと日本にとって、中国の脅威は重大かつ差し迫ったものだ。インドは中国との間に国境紛争を抱え、日本では中国の公船が尖閣諸島沖の領海を侵犯する頻度が増している。特にインドはクアッドで唯一、中国に対して陸上の防衛態勢を敷いており、軍事衝突の危険性は常にある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・ロ・ウクライナ、17日にスイスで和平協議

ワールド

米中外相、ミュンヘンで会談 トランプ氏の訪中控え

ビジネス

EU貿易黒字が縮小、米関税と中国の攻勢が響く

ビジネス

欧州証券市場監督機構、資産運用大手を監督すべき=E
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中