最新記事

2020米大統領選

米大統領選、トランプが猛反対する郵便投票で不正がほぼ不可能なワケ

2020年9月15日(火)10時55分

トランプ米大統領と共和党の一部政治家はこれまで再三、証拠もなく、11月大統領選で郵便投票が急増すれば、大量の不正に結び付くと断言している。写真は4日、ノースカロライナ州ローリーで、郵送用の投票用紙を整理する選挙管理委員会関係者(2020年 ロイター/Jonathan Drake)

トランプ米大統領と共和党の一部政治家はこれまで再三、証拠もなく、11月大統領選で郵便投票が急増すれば、大量の不正に結び付くと断言している。

しかし専門家の話では、米国では選挙不正は皆無に近いほどまれだ。既に2016年の選挙で有権者4人に約1人が郵便投票もしくは不在者投票をしている。

いかに投票不正はまれか

多くの研究者が焦点を当ててきたのは成り済まし投票だ。こうした可能性への危惧が、複数の州で有権者の本人確認を厳格化する法律を導入する根拠になってきた。

こうした事例を研究するロヨラ大学法科大学院のジャスティン・レビット法律学教授によると、米国の00年から14年の選挙で、投票件数10億件超のうち、成り済ましはわずか31件だった。

コロラド、ハワイ、オレゴン、ユタ、ワシントンの5州は現在、選挙を主に郵便投票で実施するが、不正はほとんど記録されていない。オレゴン州は00年以降、1億通を超える投票用紙を郵送してきたが、不正が立証されたのは12件ほどだ。

郵便投票の確実性

多くの州では郵便投票や不在者投票で不正を防止するため、諸策を重ねて講じている。

全米50州と首都ワシントンは有権者が郵便投票する際、宣誓書などへの署名を義務付けている。また一部の州は、生年月日や住所、運転免許証番号といった個人情報の記入も求めている。この署名は登録済みの署名、通常は有権者登録での筆跡と照合される。

全米州議会議員連盟(NCSL)によると、本人だけでなく証人の署名を義務付ける州も8州ある。3州は公証人の署名も求める。最も厳格な規則を導入しているアラバマ州は有権者に、自分の身分証明書の写しと一緒に公証人1人もしくは証人2人の署名を提出するよう命じている。

返信用封筒は通常、投票用紙を精査する担当者とは別の担当者が開封する。政党や選対陣営が指名することが多い立会人は、集計などの開票手続きの監視が認められている。NCSLによると、ノースカロライナ、カンザス、メイン、フロリダの4州を除くすべての州は、政党からの立会人による開票監視を明示的に認めている。

投票用紙の体裁は州ごとに異なるだけでなく、郡や市町村によっても大きく異なる。大半の有権者は大統領だけでなく、地元自治体の選挙も同時に行うためだ。投票が適正な形式に合わない場合は、選挙管理当局からはじかれる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ガソリン暫定税率早期廃止目指す、与野党協議を設置=

ワールド

サウジ財政赤字、第2四半期は前期から41%減 原油

ビジネス

S&P中国製造業PMI、7月は49.5に低下 輸出

ビジネス

丸紅、25年4─6月期は8.3%最終増益 食品マー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中