イギリス、EU離脱協定骨抜き法案提出がもたらす危機シナリオとは
◎トンネル協議
EUの説明では、離脱協定と将来の関係を巡る交渉とは別の話だが、実際には離脱協定に関する論争が将来関係の交渉に影を落としている。EUとしては当面、英政府に対し、将来関係についての新しい合意を駄目にしないように、また離脱協定を必ず順守するように説得を続けたい考えだ。
貿易交渉の面では、漁業権や国家補助を含めた公正な競争確保、将来の紛争解決方法などで意見が折り合わず、話し合いの主な障害になってきた。これらの分野で暫定的な進展が見られた場合は、10月半ばまでより集中的・選別的な「トンネル協議」に入ることができる。ただ国内市場法案に対するわだかまりが尾を引くようなら、そうした展開は期待できない。
◎10月15日/EU首脳会議
ジョンソン首相は10月15日までにEUとの将来の関係について交渉をまとめたいと表明、それがかなわなければ貿易交渉を打ち切り、合意なき離脱に向けた計画に専念するとしている。
EUは10月15-16日に首脳会議を開く。この時点までに将来関係の交渉が完了していない場合は、EU側も緊急計画の準備が必要だと強調する公算が大きく、合意なきブレグジットの現実味が増してくる。
◎10月末/11月初旬
EUはこれまで、英国との将来関係交渉は10月末まで、あるいは最悪でも11月の最初の数日間までにまとめないと、欧州議会や多くの加盟国議会で年末までに批准できなくなるとの見解を示してきた。
一部のEU高官は、これらの時期が過ぎても英国と話し合いを継続する可能性があると認めている。しかしそれでは来年から新たな関係の枠組みを実施できる可能性が低下し、英EUともに貿易やビジネス、市民生活の分野でリスクが高まる。
◎年末/来年1月1日
英国のEU完全離脱までの移行期間が終了。新たなFTAが成立していなければ、従来の緊密なつながりは幕を閉じ、世界貿易機関(WTO)の定める貿易規定に基づく関係に戻る。つまり来年1月1日以降、英EU間の貿易には関税と数量割り当てが導入される。
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