最新記事

ブレグジット

イギリス、EU離脱協定骨抜き法案提出がもたらす危機シナリオとは

2020年9月12日(土)09時51分

ジョンソン英政権が9日、欧州連合(EU)と結んでいた離脱協定の一部を骨抜きにする「国内市場法案」を下院に提出したことで、EUが猛反発し、自由貿易協定(FTA)を柱とする将来関係を巡る協議に暗雲が漂っている。ロンドンの英議会前で4月撮影(2020年 ロイター/Gonzalo Fuentes)

ジョンソン英政権が9日、欧州連合(EU)と結んでいた離脱協定の一部を骨抜きにする「国内市場法案」を下院に提出したことで、EUが猛反発し、自由貿易協定(FTA)を柱とする将来関係を巡る協議に暗雲が漂っている。これに伴って「合意なきブレグジット」のリスクは高まってきた。

英国とEUは10日、緊急会合を開催。EUは、英政府が協定を順守するという保証が得られない場合、同国に対して法的措置を講じる構えだ。

EUは国内市場法案の修正を要望しており、それが実現しなければ、移行期間が終わる年末に、何の取り決めもないまま、突然たもとを分かつ事態への準備を双方ともに進める公算が大きい。

今後想定される重要な節目は以下の通り。

◎9月14日

国内市場法案が成立するためには英議会の上下両院による可決が必要。14日に下院で基本的問題について、その後4日間に詳細を巡る審議が行われる。各議員が修正案を提示し、採決に付すことができる中で、与党・保守党の圧倒的な多数議席を背景としたジョンソン政権の「威光」と足場の強さが改めて試されることになる。

上院は保守党が過半数を握っていないため、より厳しい情勢が見込まれる。審議日程はまだ決まっていない。

◎合同委員会

国内市場法案の問題を受けて、数週間ほどのうちに、EU欧州委員会のシェフチョビッチ副委員長とゴーブ英内閣府担当相が主宰する合同委員会によって事態の沈静化が図れるかどうかも注目されている。

EU側は貿易交渉に向けて、英国が検討している国家的な補助計画を巡る次回協議の前に状況を明確にしておく必要があると考えている。そうでなければ、公正な市場競争を確保するための企業への補助金についての項目で、英政府と合意できないとみているからだ。

◎閉じない交渉の扉

英EUの将来関係を巡るさらなる交渉は9月28日-10月2日の予定。EUは、交渉決裂の際に責任を追及されるのを絶対に避けようとしており、離脱協定でもめている中でも、決して交渉のテーブルから立ち去らないと強調している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パラマウント、ワーナーに敵対的買収提案 1株当たり

ワールド

FRB議長人事、大統領には良い選択肢が複数ある=米

ワールド

トランプ大統領、AI関連規則一本化へ 今週にも大統

ビジネス

インフレ上振れにECBは留意を、金利変更は不要=ス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中