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北朝鮮の新たな女帝・金与正と、浮上した最高幹部「4人組」の運命

Kim’s Sister Rises to Number Two

2020年9月2日(水)19時20分
トム・オコナー(外交担当)

金与正は朝鮮労働党組織指導部の権限を握ったとみられている JORGE SILVA-POOL-REUTERS

<妹・金与正らに一部権限を委譲したと報じられ、健康不安説も付きまとう最高指導者・金正恩の真の狙いはどこに>

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が権限の一部を最高幹部5人に委譲した──来年1月に5年ぶりとなる第8回党大会の開催が予定され、国外で健康不安説が根強くささやかれる金をめぐって、そんな報道が浮上している。

国内外でいくつもの困難に直面する強硬な核保有国、北朝鮮において問題の5人は今後、より大きく、より独立した役割を担うことになるかもしれない。

金の「昏睡状態」説が、韓国の金大中(キム・デジュン)元大統領の政治顧問だった張誠珉(チャン・ソンミン)によって広まったのは8月21日のことだ。その主張は韓国の情報機関、国家情報院が前日に非公開で報告した内容とは一致していなかった。報告では金の体調に異常な点があるとはされていないと、その内容に精通する韓国議員らは言う。

とはいえ張と国家情報院の見方が一致する点が、少なくとも1つある。すなわち、金の妹である金与正(キム・ヨジョン)の存在感と権力が増している、と。

国家情報院はその報告で、新たに権限を付与された者として、金与正に加えて4人の人物を挙げた。一方で来年1月の党大会開催を前に、国際社会の経済制裁、洪水被害や飢饉、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による打撃を克服すべく、金は新たな経済5カ年計画の策定を進めている。

初の女性指導者誕生か

専門家によれば、こうした動きは金の早期の退任を示唆するわけではない。国家情報院の報告では、金与正が「国務全般」の運営を任されたとみる。北朝鮮が歴史的な転換を行い、現在は停滞する対米・対韓政策もその一環だ。この数カ月、金与正は兄の代理として、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領やドナルド・トランプ米大統領に向けた公式声明を発表している。

金きょうだいの末っ子である金与正は父親の金正日(キム・ジョンイル)の下で活動し、2011年の父の死後に兄が後継者に就任して以来、着実に地位を上げてきた。現在は朝鮮労働党中央委員会第1副部長を務め、その血統を理由に次期指導者候補と見なす向きもある。それが現実になれば、伝統的に男性中心の軍事的国家である北朝鮮にとって抜本的な変化となるだろう。

金与正は朝鮮労働党の中核的機関、組織指導部で大きな権力を握っていると考えられると、韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は8月25日に語った。

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