最新記事

米中対立

トランプがTikTok売却で「分け前」要求 法的に可能か?

2020年8月9日(日)12時56分

トランプ米大統領が動画投稿アプリ「TikTok」に迫っている米国事業売却に関して、自ら前代未聞の要求を突き付けた。売却益の「分け前」を米政府が得るべきだというのだ。法律専門家らは正当性に異議が唱えられる可能性を指摘する。写真は7月撮影(2020年 ロイター/Florence Lo)

トランプ米大統領が中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)傘下の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」に迫っている米国事業売却に関して、自ら前代未聞の要求を突き付けた。売却益の「分け前」を米政府が得るべきだというのだ。この主張は米国の法律の解釈に基づくとも言えるが、法律専門家らは正当性に異議が唱えられる可能性を指摘する。

外国からの投資が米国の安全保障を脅かすかどうかを審査する対米外国投資委員会(CFIUS)はバイトダンスに対し、米マイクロソフトへのティックトックの一部事業売却交渉に9月15日までの猶予を与えた。中国の親会社の監督下でティックトックが扱う個人データの安全性への懸念などが理由だ。

マイクロソフトはティックトックの北米、オーストラリア、ニュージーランドの事業資産の買収を求めていると表明している。支払うつもりのある金額は明らかにしていないが、関係筋が以前ロイターに語ったところによると、バイトダンス幹部はティックトック事業全体の価値を500億ドル超としていた。

トランプ氏は3日、記者団に「(マイクロソフトへの売却額の)かなりの部分は米財務省に収められるべきだろう。我々がこの案件を可能にするのだから」と語った。

トランプの主張は大統領の法定権限を逸脱していない?

法律専門家によると、CFIUSの立法規定は米政府に対し、国益を脅かす企業にリスク低減を要求する広範な権限を与えている。

CFIUSはこれまで、命令した売却からの利益の一部を支払うよう求めたことは一度もない。しかし、何人かの法律専門家によれば、ホワイトハウスは今回、バイトダンスに手数料を課すのは、そうでなければ技術面で中国政府への支援に使われたであろう資源から一部を剥奪することだと主張する可能性がある。そうした中国政府への支援は米国の国益に有害な恐れがあるという理由だ。

クリアリー・ゴットリーブの規制法専門家、ポール・マーカート氏は「米議会の意図にも間違いなくそぐわない。CFIUSが政治とは無縁で安全保障の見地にのみ基づいて行動するという名声を維持する上で、長期的な阻害要因になるのも明白だ」と指摘。ただ、トランプ氏の今回の主張が大統領の法定権限を逸脱しているかは「はっきりしない」とも述べた。

ホワイトハウス、米財務省、バイトダンス、マイクロソフトはいずれもコメント要請に即座に応じていない。


【関連記事】
・トランプのツイッターで急浮上 米大統領選「悪夢のシナリオ」
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・中国からの「謎の種」、播いたら生えてきたのは......?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国の新規銀行融資、11月は予想下回る3900億元

ビジネス

仏ルノー、モビライズ部門再編 一部事業撤退・縮小

ビジネス

ECB、大手110行に地政学リスクの検証要請へ

ワールド

香港の高層住宅火災、9カ月以内に独立調査終了=行政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中