最新記事

中国

安倍首相辞任表明、中国共産党系メディア「日米を離間させ、日本を取り込め!」

2020年8月31日(月)10時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

河野氏は最近になって対中強硬的な発言をするようにはなったが、外務大臣だった時には何をしていたのか。中国外交部の華春瑩報道官とツーショットを自撮りして悦に入っていたのではないのか。

最初は2018年2月で、2回目は2019年8月だ。その記事のタイトルにもある通り、「好感沸いた」「日中友好を」と、両国で話題になった。

特に日本では、あのこわもての女性報道官が「笑い顔がステキ」とか「案外かわいい人じゃない」ともてはやされ、まさに「日中友好」という「中国の思う壺」にピタッとはまったのである。こうして「中国までもが安倍首相が良かったと言っている」ことを、さも「ありがたい」あるいは「誇らしいこと」と勘違いする日本のメディアが出来上がっていくのである。

習近平国賓招聘を中止すると宣言すべき

安倍首相が辞任表明した理由が理由だけに、個人的感情としては「お気の毒だ」と同情するし、早く完治してほしいと本気で祈る。また安倍首相が長期政権を保ったことによって回転ドアと揶揄されて国際的信用を失ってしまった日本の信用を回復させたことは高く評価したい。だからこそ支援してきた。

安倍晋三氏自身は、個人的には良い人だと思うし、特に辞任表明会見は、覚悟を決めた人間の毅然とした気品さえ漂わせ、真摯で胸を打つものだった。「頑張れ!」と声を掛けたいほどだ。その意味で尊敬する。

しかし、それでもなお、習近平を国賓として日本に招く約束をした安倍政権に対しては「絶対にそうしてはならない」という意思表明を続けることは変わらない。

ポスト安倍が誰になるのかは分からないが、少なくとも習近平を国賓として招くことを「しないと宣言できる」人物に日本のリーダーになってほしい。

米中の天下分け目の闘いが展開されている今、あたかもその趨勢を決するような形で中国側に付く日本の姿など見たくない。

一部の自民党議員からは「こちらがご招待すると言いながら、こちらから断るわけにはいかない」という声が聞こえていたが(特に石破議員は「失礼に当たる」とさえ言っていたようだが)、安倍首相が辞任表明した今こそ、それを理由に断ることができるのではないだろうか。

次期総理大臣には、この二度とないタイミングを逃さないようにしてほしいと切望する。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。


中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 9
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中