最新記事

デモ

ベラルーシの不正選挙抗議デモ止まず プーチンにも不安材料となる可能性

2020年8月23日(日)13時26分

プーチン氏にとっては不安

しかし、プーチン氏と同じく20年以上権力を握り続ける独裁指導者に対して、ロシア語を話す市民数万人が抗議の声を上げる光景は、同氏にとっては不安だろうともコレスニコフ氏は指摘する。

「彼としては、ベラルーシの抗議は失敗する必要がある。隣の『兄弟』国で抗議が成功を収めるのは、気分が良くないだろうから」と分析。

ベラルーシで危機が始まって以来、プーチン氏はルカシェンコ氏と数回、電話で話し、必要があれば軍事支援を行うと申し出た。ただ、今のところ、ロシア政府はその必要はないと判断している。

ロシアの政治体制は厳格に統制されているため、反政府派は影響を行使するのに何年も苦心してきた。しかし今、彼らはベラルーシのデモから着想を得ている。

野党指導者のナワリヌイ氏は来月のロシア地方選挙に向けて14日、動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」で、今回、ベラルーシの基幹部門の労働者によるストの成功をきっかけに、政権が抗議活動に対応せざるを得なくなったエピソードを興奮気味に紹介した。ルカシェンコ氏の対立候補に投票したと訴える労働者たちの映像もアップしたが、そこには「ロシアの将来」とのナワリヌイ氏のコメントが付けられていた。

ナワリヌイ氏の側近のレオニド・ボルコフ氏は、自分たちはベラルーシ当局のやり口を注目していると話す。「私たちは、ルカシェンコ氏がインターネットを切断しようとしたことを注視している。これは非常に重要だ。なぜならロシアでも、間違いなく同様の事が待ち受けるからだ」とツイートした。

ロシアの反政府活動家らは、2024年のロシア大統領選で今のベラルーシと似た状況が訪れる可能性を見据えている。プーチン氏は憲法改正に成功、再出馬を可能にした。

ロシアの野党政治家のドミトリー・グドコフ氏は「今のベラルーシに、われわれの近未来が見える」と語り、ベラルーシの大統領選では投票結果をすげ替える不正が行われたのは間違いないと指摘した。

ロシア大統領府も、潜在的な脅威を警戒している兆しがある。

ロシア国営メディアは当初、ベラルーシの抗議デモを同情的に伝えていたが、その後は論調を切り替えた。外国政府による介入や、ポーランドが地域的優位を虎視眈々と狙っていることに言及するようになり、過去の東欧などでの民主化運動も取り上げるようになった。これはウクライナやジョージアでの体制抗議活動のことを指す。

モスクワにあるベラルーシ大使館周辺で数百人の同国人がピケ隊を組んだ際には、たまりかねてロシア当局が排除に乗り出し、プラカードなどを近くのごみ箱に投げ捨てた。

(Andrew Osborn記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見
・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる


20200825issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ベゾス氏、製造業・航空宇宙向けAI開発新興企業の共

ワールド

米FEMA局長代行が退任、在職わずか6カ月 災害対

ビジネス

米国株式市場=大幅安、雇用統計・エヌビディア決算を

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロ・円で上昇、経済指標の発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中