最新記事

韓国

韓国、不動産価格の急騰で文在寅政権への不満爆発 与野党の支持率が4年ぶりに逆転

Moon’s Real Estate Problem

2020年8月20日(木)17時30分
テジョン・カン

国会での演説を終え、退出する文在寅(7月16日) JUNG YEON-JE-POOL-REUTERS

<不動産価格の安定化を図るべく3年間で20回以上の対策を講じるも効果なし。文大統領と与党はなおも楽観視しているが...>

韓国の保守系最大野党・未来統合党の支持率が4年ぶりに与党「共に民主党」を上回った。世論調査機関リアルメーターの最新調査によると、同党の支持率は36.5%、共に民主党は33.4%だ。

これまでの未来統合党は、国民の支持を集めるのに苦労していた。特に前身のセヌリ党時代に党を率いた朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾後は苦戦続きで、共に民主党より支持率が高かったのは、0.4ポイント差で上回った2016年10月が最後。その直後に朴のスキャンダルが発覚して以降は、セヌリ党から自由韓国党(2017年2月~20年2月)、未来統合党へと党名を変えてイメージ刷新を図ったが、一貫して共に民主党の後塵を拝していた。

ここへ来て潮目が変わった背景には、政府の不動産政策に対する国民の広範な怒りがある。国民に「一生懸命働けば家を買える」と約束した文在寅(ムン・ジェイン)政権は、ローン規制など急騰する不動産価格の安定化策を3年間で20回以上講じたが、いずれも効果がなかった。

政府と与党はさらなる不動産市場の引き締め策を発表したが、正確な問題分析を欠く急ごしらえの対策なのではないかという懸念が出ている。

例えば、8月10日に表明した新たな対策の1つである「不動産市場監督機関」の設置計画。要するに、不動産市場を監督・管理するための新たな機関を政府が創設するというものだが、本質的に経済問題である不動産価格の急騰を政治的アプローチで解決しようとしているのではないかと懸念されている。

今の政府に必要なのは、拙速な対策を矢継ぎ早に打ち出すことではないはずだ。

政府・与党は楽観視だが

リアルメーターの世論調査では、文在寅大統領の支持率も8月第2週に前週より0.6ポイント低下して43.3%となった。2019年10月第2週以来の悪い数字であり、ここ数週間の漸減傾向に歯止めがかからない状態が続いている。

政府・与党は危機感を強めているかと思いきや、必ずしもそうではないようだ。地元メディアの取材に匿名で応じた共に民主党のある議員は今回の世論調査について、党として問題を認識しているが、住宅価格はいずれ安定化するので、国民の怒りも徐々に下火になるだろうと語った。

文大統領も同様に楽観的な見方をしている可能性がある。文は10日、政府・与党が全面的な不動産対策を打ち出した際、住宅価格の上昇は「落ち着いてきた」と述べた。

ただし、この発言には根拠がほとんどないように見える。現政権下で首都ソウル市内のマンション価格の中央値は52%上昇し、賃貸マンションの保証金は56週連続で上昇している。「落ち着いてきた」という文の発言が、一部で反発を買ったのも不思議ではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米のベネズエラ介入は大惨事招く恐れ、ブラジル大統領

ビジネス

FRB議長候補ハセット氏、インフレ「極めて低水準」

ワールド

サンフランシスコ大規模停電、顧客約11万件で電力復

ワールド

欧州・ウクライナの米提案修正、和平の可能性高めず=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中