最新記事

朝鮮半島

脱北者、北に逃げる。物語で描かれないその素顔

2020年8月7日(金)21時40分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

ゆるゆるだった韓国軍の警戒

この事件について、韓国国民からは脱北者管理システムの甘さを指摘する声が上がっている。7月末、韓国陸海空軍を統合指揮する合同參謀本部は、キム氏が北朝鮮側に到着するまで合計7回も軍監視装置に姿が捉えられていたことを明らかにした。

キム氏の越北を発見し防ぐことが出来たのにも関わらず、見逃してしまったこの事件に対し、合同參謀本部は海兵隊司令官と各軍団長を厳重注意し、さらに海兵2師団長を補職解任するなど厳しい処置を与えた。

それというのも、調査結果によりキム氏が北朝鮮に帰るのに利用したとされる国境線近くの排水路は、軍部隊の規定により、1日2回排水路侵入防止装置を点検することとなっていたが、それをまったく行っていなかったことが発覚したからだ。

さらに、この報道の翌日、8月1日には脱北者の管理について、警察官1名につき30-60名にも上る人数を担当していることが明るみになり波紋を呼んだ。あまりにも多い人数に脱北者担当官と脱北者との信頼関係を気付くことは難しく、管理といってもたまに警察署から電話をする程度だという。さらに、脱北者のうち約10%が電話番号を勝手に変更して連絡もしないため、実質的に管理ができていない脱北者もいる状態だ。

越北を幇助? 警察が怠慢?

またキム氏の越北問題は、あるユーチューバーが関与していた疑惑がもちあがっている。彼女も同じく脱北者であり、アルバイトをしながらユーチューバーとして動画投稿をしていた。キム氏とは車を貸し借りする仲であり、キム氏逃亡の前日に車を貸していたが、他の友人からキム氏が越北の恐れがあるという噂を聞いて、警察署を訪ね通報した。

しかし、警察に取り合ってもらえなかったという。これについて警察側は「訪ねてはきたが、越北のことではなく車両窃盗申告のみ行った」と反論した。

今、この脱北ユーチューバーが、キム氏の越北を「知っていたのにも関わらず通報しなかった。」「いや、通報したのに取り合ってもらえなかった」と意見が対立し論争にまでなっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

与党「地滑り的勝利」で高市トレード再開へ、日経6万

ワールド

高市首相、消費減税「やった方がいいと確信」 改憲は

ワールド

自民単独300議席超、「絶対安定多数」上回る 維新

ビジネス

自民大勝でも「放漫財政にならない」=片山財務相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 5
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 8
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中