最新記事

朝鮮半島

脱北者、北に逃げる。物語で描かれないその素顔

2020年8月7日(金)21時40分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

7月末、北朝鮮へ「越北」した脱北者キム氏の韓国での住民登録証 연합뉴스TV / YouTube

<命がけで韓国に渡ったはずなのに何が彼を出戻らせたのか?>

今年、ネットフリックスの配信がきっかけで、世界的大ブームにまで発展した韓国ドラマ『愛の不時着』。このドラマでは韓国と北朝鮮を越える男女の愛を描いているが、現実にはあり得ない両国を行ったり来たりするアイデアが新鮮で、分断国家だからこそ描けるストーリーだと感じてしまう。

韓国の国家行政機関・統一部によると、朝鮮戦争休戦協定が締結された1953年より去年末までで、北朝鮮から脱北し韓国に定住している脱北者数は、3万3500人に上るという。その数は2008年~2009年が最も多く、1年で3000人弱の人が北朝鮮から亡命し韓国での生活を始めている。

逮捕恐れて出戻った脱北者

そんな脱北者達だが、中にはせっかく韓国にやってきたのにもかかわらず、また北朝鮮に戻る「越北者(월북자)」と呼ばれる人たちも存在する。理由は様々だが、7月にはある20代の男性脱北者が北朝鮮に「越北」し、今その事件が波紋を広げている。

2017年韓国へ脱北したキム氏は、今年6月中旬、知り合いの女性を性的暴行したとして刑事事件で立件されていた。7月4日には、被害者女性の体内から検出された精液が、DNA鑑定によってキム氏の物と一致したということで、容疑がかけられていた。しかし、その15日後の19日午前1時に、キム氏の知人が警察へ「キム氏が有り金を全部ドルに換金していた。越北の可能性がある」通報し、翌日警察がキム氏の自宅に確認に向かったところ、そこはもぬけの殻だった。

警察の捜査で、キム氏は18日の午前2時20分に仁川市のある街でタクシーを下車していたことが判明。周辺にキム氏の物と思われる鞄が発見され、その中には銀行から500万ウォンを引き出し、480万ウォンを米ドルに換金したとみられる両替領収書が入っていたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏関連資料、司法省サイトから削除か エプス

ワールド

北朝鮮、日本の核兵器への野心「徹底抑止」すべき=K

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ

ワールド

アングル:トランプ政権で職を去った元米政府職員、「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中