最新記事

インドネシア

親IS系テロ組織メンバー15人逮捕 インドネシア、独立記念日前の一斉摘発

2020年8月16日(日)12時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

拘束された容疑者のうちの1人が住んでいた住宅。この容疑者は医者だったという。 tvOneNews / YouTube

<間もなく独立記念日を迎えるインドネシア。祝賀行事での新型コロナ感染と同時にもう一つの危機の懸念が......>

インドネシア国家警察の報道官は8月14日、対テロ特殊部隊「デンスス88」が中東のテロ組織「イスラム国(IS)」と関係が深い国内のテロ組織2つのネットワーク摘発作戦で15人をテロ容疑で逮捕したことを明らかにした。

インドネシアでは17日が独立記念日であることから同日の前後を狙ったテロの可能性もあるとして内偵捜査を強めた結果、一斉逮捕に踏み切ったとみられている。

国家警察のアウィ・スティヨノ報道官は14日のオンライン記者会見でデンスス88が12日に首都ジャカルタ、西ジャワ州などの複数の地区でテロリスト摘発作戦を実行し、合計で15人をテロ撲滅法違反容疑で逮捕したことを明らかにした。

逮捕したテロ容疑者はいずれもイニシャルだけの公表で実名は明らかにされていない。年齢は21歳から54歳で、いずれもインドネシアのテロ組織である「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」と「東部インドネシアのムジャヒディン(MIT)」のメンバーないしメンバーにつながる関係者としている。

逮捕した15人はJADやMITで会計財務担当や兵站部門の調達係り、メンバーなどのIS参加を目的とするシリア渡航の手続き支援活動などに主に携わっていたものと警察はみている。

今回の摘発、逮捕で爆弾や武器などが押収されたかどうか、また独立記念日などを狙った具体的なテロ実行計画があったかどうかについて同報道官は明らかにしていないものの、国家警察は「テロの可能性、危険性は常にある」と日頃から国民に警戒を呼びかけていることもあり、15人逮捕の後もテロへの警戒を弱めていない。

最も活発で過激なテロ組織「JADとMIT」

今回摘発されたJADとMITはインドネシアのテロ組織の中では最も活動が活発で爆弾テロなど過激なテロ活動を実行する組織として知られている。

MITは主にスラウェシ島中スラウェシ州ポソを中心とした地域で活動するテロ組織だが、相次いで起こした爆弾テロ事件を重視した治安当局が2020年1月1日からMIT壊滅を目指した「ティノンバラ作戦」を発動して重点的に取り組んできた経緯がある。依然としてMITの最重要容疑者14人が未拘束であることなどから同作戦は9月30日まで再々延長されている(関連記事「インドネシア、イスラム過激派壊滅作戦を延長 長期化で民間人を誤認殺害との報道も」)。

スラウェシ島での治安当局の作戦が延長、強化されている影響もあり、MITのメンバーがジャワ島に移動して新たなメンバー獲得のリクルート活動や資金集めに躍起となっているとの情報があったが、今回ジャワ島でMITの関係者が逮捕されたことでそうした情報が証明されたといえる。

また各地で爆弾テロを計画、実行しているJADは2014年に設立されたテロ組織でシリアのISとの関係も深いほか、フィリピン南部のイスラム系テロ組織「アブ・サヤフ」との関係も緊密化しており、メンバー交流、共同作戦などにも近年は力を入れているとされる。活動地域はインドネシア各地に及んでいる。


【話題の記事】
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見
・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナとシリアが外交関係回復、指導部がNYで会

ビジネス

黄金株の権限など、見解分かれ得るもの=米工場停止阻

ワールド

香港・スリランカ・チリ・バングラデシュがRCEPへ

ビジネス

中国人民銀、香港で人民元建て債券の支援強化へ=副総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
2025年9月30日号(9/24発売)

トヨタ、楽天、総合商社、虎屋......名門経営大学院が日本企業を重視する理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 2
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 3
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市場、売上を伸ばす老舗ブランドの戦略は?
  • 4
    【クイズ】ハーバード大学ではない...アメリカの「大…
  • 5
    クールジャパン戦略は破綻したのか
  • 6
    週にたった1回の「抹茶」で入院することに...米女性…
  • 7
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 8
    トランプの支持率さらに低下──関税が最大の足かせ、…
  • 9
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 10
    9月23日に大量の隕石が地球に接近していた...NASAは…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 5
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 6
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 7
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 8
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 9
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 10
    「ミイラはエジプト」はもう古い?...「世界最古のミ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中