最新記事

韓国政治

「共に痴漢民主党」と揶揄も ソウル市長の突然死で韓国与党にさらなる危機

Mayor’s Death Heightens Election’s Importance

2020年7月20日(月)18時10分
テジョン・カン

朴市長はセクハラで告訴された翌日に自ら命を絶ったとみられる KIM HONG-JI-REUTERS

<性的スキャンダルが相次ぎ「女性の権利擁護に積極的」というイメージにダメージ。「共に民主党」は、ソウル、釜山市長補選と次期大統領選をどう戦うのか>

朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長の突然の死は、韓国人に大きな衝撃をもたらした。特に、元秘書の女性が朴からの長年にわたるセクハラ被害を告訴した翌日に自殺したとみられていることに、支持者は動揺している。朴は改革志向であり、女性の権利を擁護する政治家としてキャリアを積んできたからだ。

だが朴と同じ与党「共に民主党」の政治家には、別の懸念がある。朴の死によって2021年4月に実施されるソウル市長の補欠選挙だ。韓国第2の都市である釜山の市長ポストも空席になっている。前市長の呉巨敦(オ・ゴドン)は、セクハラ疑惑で4月に辞任した。釜山市長の補選もソウルと同じ2021年4月に行われる。

首都ソウルの市長は、韓国政治で最も重要なポストの1つ。歴代の市長には大統領選の有力候補となった例も多い。

釜山市長の地位も政治的に重要だ。22年3月の大統領選の結果を左右しかねない同市と近隣地域の票をまとめる立場にあり、勝敗のカギを握るほどの影響力を持つ。

共に民主党は2つの大型補選で、党有力者に相次いだ性的スキャンダルの後遺症に苦しむだろう。釜山市長だった呉の辞任も、女性公務員に性的暴行を告発されたためだ。呉は「不必要な身体的接触」があったことを認めている。

さらに忠清南道の知事だった安熙正(アン・ヒジョン)が2019年、元秘書への性的暴行で懲役3年6カ月の実刑判決を受けている。朴、呉、そして安は、いずれも共に民主党出身の政治家だ。

「共に痴漢民主党」と揶揄

相次ぐ性的スキャンダルで、共に民主党のイメージは著しく損なわれ、ネット上では「共に痴漢民主党」と揶揄されている。同党は女性の権利擁護に積極的で、どんなセクハラも断じて許さない姿勢を示してきたため、多くの有権者が失望を感じている。

共に民主党は、進行中の裁判の成り行き次第では2つの知事ポストも危うくなる。

京畿道の李在明(イ・ジェミョン)知事は、2018年の知事選で公職選挙法が定める虚偽事実公表罪を犯したとして起訴された(だが最高裁は今年7月16日、罰金刑を言い渡した2審判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した)。

慶尚南道の金慶洙(キム・ギョンス)知事は2017年の大統領選で現職の文在寅(ムン・ジェイン)陣営の幹部を務めたとき、ネット上の世論操作に関与したとして、2019年に一審で懲役2年の実刑判決を受けた。

【関連記事】韓国ソウルのパク・ウォンスン市長、遺体で発見 セクハラ告発と関連か

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中