最新記事

中東

イラン革命防衛隊のミサイル開発に新事実 アルミ粉末計画の内幕

2020年6月26日(金)12時48分

阻止された輸出

国連はイランの核開発疑惑を阻止する取組みの一環として、同国のミサイル開発に目を付けてきた。安保理が10年6月に採択した決議第1929号により、イラン政府による核搭載可能な弾道ミサイルの製造は制限され、他国がイランに対し関連技術や技術支援を提供することも禁止された。

決議の順守状況を監視している国連の専門家パネルによると、シンガポール当局は10年9月、中国からイランに向けて輸出されたドラム缶302本分のアルミニウム粉末を押収した。専門家パネルは11年の報告書に、粉末中のアルミニウム含有率が高ければ「最終用途はほぼ確実に固体燃料ミサイルの推進剤であることを示唆している」という弾道ミサイルの専門家の指摘を盛り込んだ。

アミル・モガダム氏と、同氏がロイターに提供した2点の文書によると、ジャジャームの施設は11年までに整備計画が進められていた。その文書の1つは、11年10月にIACの担当部長だったマジド・ガセミ・フェイザバディ氏から、革命防衛隊のミサイル計画を指揮するハッサン・テヘラニ・モガダム大将に宛てた書簡だった。

IACのガセミ氏は、モガダム大将の指示に従いジャジャーム近郊の「使われなくなった空港」近くにプロジェクトに好適な場所を見つけたと書いている。また、プラント建設費用としてイランの政府系ファンドから1800万ドルを出資してほしいと要請している。

「イラン国家開発ファンド」と呼ばれるこのファンドが実際に出資したかどうか、ロイターは確認することができていない。

ロイターが検証した文書のなかには、ガセミ氏と彼の秘密計画のため、革命防衛隊とイラン当局者が司法に介入したことを記したものもあった。ガセミ氏は15年、IACが絡んだ金融取引の汚職疑惑をめぐってイラン国内で拘束されたことになっている。だがアミル・モガダム氏によると、ガセミ氏は起訴されることなく釈放されたという。

ガセミ氏にコメントを求めたが回答は得られなかった。革命防衛隊のミサイル開発計画を指揮していたハッサン・テヘラニ・モガダム氏は故人であり、同姓ではあるがアミル・モガダム氏とは無関係である。ロイターは故人のきょうだいのムハマド・テヘラニ・モガダム革命防衛隊司令官にコメントを求めようとしたものの、連絡がつかなかった。


【話題の記事】
・コロナに感染して免疫ができたら再度感染することはない?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・東京都、新型コロナウイルス新規感染48人を確認 今月5度目の40人超え
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、零細事業者への関税適用免除を否定 大

ビジネス

加藤財務相、為替はベセント米財務長官との間で協議 

ワールド

トランプ米大統領、2日に26年度予算公表=ホワイト

ビジネス

米シティ、ライトハイザー元通商代表をシニアアドバイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中