最新記事

米朝関係

金正恩の標的はトランプとの交渉 韓国への挑発は奏功するか

2020年6月24日(水)12時59分

北朝鮮はこの数週間、韓国との緊張を強める行動を取り続けている。その狙いは米国の反応だ。写真は2019年6月、板門店で撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

北朝鮮はこの数週間、韓国との緊張を強める行動を取り続けている。その狙いは米国の反応だ。国内問題に心を奪われているトランプ政権をもう一度、振り向かせ、北朝鮮制裁の緩和につながる交渉を再開させたいという思惑があるに見える。

北朝鮮は16日、南西部・開城(ケソン)の南北共同連絡事務所を爆破し、韓国との対話の打ち切りを宣言したほか、軍事行動も辞さない姿勢を示している。

一方のトランプ氏は北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長との3度にわたる歴史的な会談にもかかわらず、朝鮮半島非核化の取引には失敗した。今はどうかと言えば、新型コロナウイルス危機と人種差別反対の抗議デモ、11月の大統領選といった国内の様々な課題にかかりきりの状態だ。

金氏は、トランプ氏との会談が失敗に終わったことで厳しい現実に直面している。すでに制裁で疲弊していた北朝鮮経済は新型コロナ対応の国境封鎖で一段と悪化し、政権上層部や軍部の支持基盤を危うくしている可能性がある。

アナリストによると、米国の同盟国である韓国を金氏が攻撃する狙いの1つは、米政権に対し、北朝鮮との間で未解決の問題があることを思い起こさせ、恐らくは介入を余儀なくさせることにある。

韓国の元大統領外交秘書官の張虎鎮(チャン・ホジン)氏は、「トランプ氏は事態を収めるために北朝鮮と話し合う必要性を感じている可能性もある。軍事的挑発を示唆した金氏の脅しについては受け流す態度を公にするだろう」と分析。「北朝鮮としては、南北合同経済プロジェクトの推進に向けて、韓国が北朝鮮制裁の緩和をより強く働き掛けることを願っているとみられる。韓国との緊張を高め、そう仕向けようとしている」と語った。

制裁緩和は遠い公算

北朝鮮との米国の交渉を率いてきたビーガン北朝鮮担当特別代表などの米当局者は、米大統領選前に「土壇場の努力」をするだろう、とソウルの外交関係者は言う。同関係者は米政権がまもなく完全に選挙モードに突入すると指摘し、「こうした米当局者の間には、今年前半を無駄に終わらせるわけにはいかないとの焦りがある」と述べた。

ただ、事情に詳しい米外交筋によると、米政権はいつでも北朝鮮と話し合いをする意欲はあるが、近い将来に事態を大きく進展させるような交渉は考えにくい。とりわけ、北朝鮮が寧辺核施設の廃棄を提案するだけなら、事態打開は望み薄という。米国に制裁見直しを検討させるに十分な核開発計画放棄を北朝鮮が話し合う意欲がない以上、制裁緩和は遠いままになる公算が大きいという。

非核化交渉の韓国側の責任者だった魏聖洛(ウィ・ソンナク)氏によると、新型コロナと反人種差別抗議デモ、民主党で大統領選への指名を確定させたバイデン候補の支持上昇によって、譲歩を獲得するための金氏の戦略が変化した可能性がある。

金氏は新年の演説で「新たな戦略兵器」を公表すると予告した。自身が昨年末に設定した交渉再開の期限を米政権が無視したため、というのが理由だ。にもかかわらず、北朝鮮は今や、トランプ氏の政策課題から抜け落ちているように見えるのだ。トランプ氏自身が国内危機にはまり込んでいるためだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米当局、銀行資本要件で「トークン化証券」に追加手当

ワールド

約150人死亡のイラン女学校攻撃、「米国の関与」濃

ワールド

欧州警察機関、中東紛争がEUの治安に「直ちに影響」

ワールド

米とベネズエラ、外交関係回復で合意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    「え、履いてない?」モルディブ行きの飛行機で撮影された、パイロットの「まさかの姿」にSNS爆笑
  • 3
    「ハリポタ俳優で終わりたくない」...ハリー・メリングが新作『ピリオン』で見せた「別人級」の変身
  • 4
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 5
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 6
    対イラン攻撃に巻き込まれ、湾岸諸国が存立危機
  • 7
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 8
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「旅客数が多い空港」ランキン…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中