最新記事

米軍

ドイツ駐留米軍を減らすトランプの3つの勘違い

The Truth About German Bases

2020年6月19日(金)16時50分
マイケル・ウィリアムズ(ニューヨーク大学国際関係プログラム部長)

ソ連崩壊後、再統一したドイツはロシアとの関わり方を模索し続けてきた。この20年、ドイツの政策立案者は党派を問わず、ロシアを敵に回して欧州の安全保障政策を定義できるとは考えなかった。

ロシアがウクライナに軍事介入してクリミア半島を編入した際は、ドイツも強硬な対応を求められた。しかし、プーチンがバルト海をのみ込もうとしている、ポーランドに侵攻しようとしているといったとっぴな考えを、ドイツのエリート層は信じなかった。

ドイツ軍は多国籍軍の主力としてリトアニアに駐留し、リトアニアの防衛力増強を手助けしてきた。こうした動きは、共同防衛に対するドイツの強いコミットメントを物語っている。

さらに2014年のNATO首脳会合で、ドイツは既に国防費の増加を約束している。トランプが欧州の同盟国の「タダ乗り」をツイッターで攻撃する何年も前のことだ。

2019年のドイツの国防費は前年比10%増で、冷戦終結後最大の伸びだった。軍事力のさらなる開発も進んでいる。

ドイツの対ロシア政策は、敵視や軍事化より外交と関与を重視してきた。それは今後も変わらないだろう。

問題は、NATOがもはやロシアへの抑止力にならないことだ。それでもドイツがロシアと衝突することがあれば、それはドイツがNATOの同盟に忠実だからだろう。

しかし、トランプが軍縮協定や国際条約をあまりにやすやすと放棄するため、ドイツが紛争に引きずり込まれるのではないかという不安は募るばかりだ。アメリカとの同盟は、資産というより負債の色が濃くなっている。

米軍の適正な規模や戦略の創造的な見直しは、議論する価値がある。だが、リバランスとは全面的な撤退ではない。欧州の米軍基地は、何よりもアメリカの国家安全保障を支えているのだ。

ドイツおよび欧州全域の駐留米軍の現在の規模は、同盟の結束力、相互運用性、パートナーとしての保証を考えると最低限のレベルに近い。ドイツでのさらなる削減は自滅的であり、非自由主義に傾いている同盟国のポーランドに移転させることは、ばかげている上にコストがかかる。

数字を振りかざす前に

アメリカが欧州の国防費の少なさを懸念すること自体は当然だ。欧州の基地の維持がアメリカの国益にかなっているとしても、有能なパートナーを求めたいだろう。

【参考記事】米軍がコロナ感染者の新規入隊を永久に禁止?

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRBの慎重姿勢で広範に買

ビジネス

米国株式市場=主要3指数が最高値、利下げ再開を好感

ビジネス

米CB景気先行指数、8月は予想上回る0.5%低下 

ワールド

イスラエル、レバノン南部のヒズボラ拠点を空爆
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中