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プーチン

大統領就任20年、ロシアを「巻き戻した」プーチンの功罪を9人の識者が斬る

HOW PUTIN CHANGED RUSSIA FOREVER

2020年6月4日(木)16時40分
スーザン・グレーサー(元ワシントン・ポスト紙モスクワ支局共同支局長)ほか

プーチンがさらに大きく変えたのは、国際社会におけるロシアの位置付けだ。プーチン以前のロシアは政治的には東ヨーロッパの国々と共に困難な民主化の道をたどる弱小国だった。今のロシアは強大で攻撃的な全体主義の大国だ。近頃ではプーチンの外交政策を説明するのに、歴史に残るツァーリ(皇帝)の業績が引き合いに出されることが多くなった。

この変化こそ、プーチンがもたらした最も有害な変化だ。いつかはきっとロシアも理性的でまともな国になる──そんなささやかな希望すら打ち砕かれようとしている。

民主主義の意味も知らない若者世代の悲劇

イリーナ・ボロガン(ジャーナリスト)

プーチンが国内でつくり出した最も重大な変化とは、自由な討論や民主主義の意味を知らない若年層の存在だ。カネを稼ぐには政治に関与したり当局を批判してはならない社会では、個人的な生活や仕事という領域でしか選択肢が許されない。ロシア社会には非常に大きな不安が存在し、新型コロナウイルスや経済危機によってその不安は膨らむ一方だ。

手荒なやり方をしても、プーチンは国際舞台にとどまり続けている。ロシアが自国市民などの人権を侵害しても、EUや欧州安保協力機構(OSCE)から厳しい罰を受けないからだ。さらにアメリカやEUの不満にもかかわらず、ロシアはシリア内戦に軍事介入し、中東での影響力を復活させた。NATO加盟国のトルコとミサイルシステム売却契約を結んでもいる。こんな事態は20年前には想像もできなかった。

汚職と強欲がはびこり偉大な国になれなかった

エフゲニヤ・アルバツ(ジャーナリスト、政治学者)

ソ連崩壊後のロシアには開けた国の仲間になる期待と潜在的可能性があった。だが、もはやそうではない。

私に忠実であるのなら「ロシアを再び偉大な国にする」ことを約束しよう、とプーチンは国民に誓った。外国の領土を併合し、近隣国に戦争を持ち込んだ。その結果、偉大になるどころか、尊敬される地域大国にもならなかった。嘘や暗殺、予測不能性の上に立つロシアの政策は近隣諸国に恐れられ、国際社会から不信や嫌悪の目で見られている。

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国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

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