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マスク外交

欧州一の反中国家チェコに迫る中国「マスク外交」

China’s Mask Diplomacy Won’t Work in the Czech Republic

2020年5月22日(金)21時13分
ティム・ゴスリング(ジャーナリスト)

チェコのトーマシュ・ペトシーチェク外相は最近、中国製の医療品に依存するのは安全保障上も危険だと警告。中国とさらに距離を置く可能性を示唆した。バビシュ首相も、チェコとEUおよびNATOの関係を重視している。

だがゼマンは、2013年に大統領に選出されて以降、名誉職的な大統領職権限の限界に挑み、中国とロシアとの関係強化を模索してきた。2015年には中国のCEFCからの投資を受け入れた。ゼマンが中国を複数回訪問していることや、ゼマンとつながりのある企業が中国市場へのアクセスを認められたことを受けて、チェコがそれまでの西側寄りの外交政策を変えようとしているのではないかと国内外で疑念の声が上がったほどだ。

2016年に習がプラハを訪問した際には、同市の多くの地域が閉鎖され、デモ隊は厳しく取り締まられるなど、中国の政治的影響力が増大しつつあることが見て取れた。そのすぐ後、チェコの閣僚3人がダライ・ラマと面会した際には、ゼマンとボフスラフ・ソボトカ首相(当時)がすぐに、中国政府の「ひとつの中国」原則を支持する(つまりチベットに対する中国の主権を認める)声明を出した。

そして今、新型コロナウイルスの感染拡大危機を受けて、ゼマンは改めて中国との関係強化を提唱し、中国政府はチェコでの影響力増大を狙っている。4月には、チェコのコンサルティング会社が、パンデミックによって迅速な5G開発がきわめて重要になり、ファーウェイを排除すれば劇的に開発コストが上昇するとする報告書をメディアにばら撒いた。その後すぐに、ファーウェイ側が秘密裏にチェコ企業のアナリストに金銭を支払っていたことが明らかになっている。だが結局5月6日、チェコ政府は5G通信網の構築でアメリカとの協力を宣言した。

中国のロビー活動は、ハンガリーをはじめ中国に理解のある独裁色の強い政府には効果を発揮してきた。だが民主主義が深く根を張っているチェコにはそう簡単には通用しないはずだが。

From Foreign Policy Magazine

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