最新記事

軍事

中国、新型コロナによる景気悪化でも国防費は今年も増額か

2020年5月19日(火)12時27分

中国政府は全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が22日に開幕するのに合わせ、今年の国防費を前年から拡大する方針を示す見通し。北京で行われた軍事パレードで2019年10月撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

中国政府は全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が22日に開幕するのに合わせ、今年の国防費を前年から拡大する方針を示す見通し。新型コロナウイルス流行が国内景気に暗い影を落とすが、米国による軍事圧力が増大しているとの認識の下、再び増額を決めるとみられる。

中国は昨年の予算で国防費を前年比7.5%増やした。通年の国内総生産(GDP)成長率は6.1%にとどまり、国防費の増加率を下回った。

昨年終盤に湖北省武漢市で新型コロナウイルスが発生し、感染が急速に拡大した影響で、今年第1・四半期のGDPは前年同期から6.8%落ち込んでおり、政府は経済の困難な状況が続いているとの見解を示してきた。

コロナ禍に見舞われる中でも、中国と米国の軍は南シナ海と台湾周辺で活動を継続してきた。

上海交通大学の謝岳・政治学教授は、国防費の伸び率が昨年を上回るか下回るかを予想するのは難しいが、増加するのは確実だと指摘。

「国家安全保障の観点から言えば、軍事を含む全ての側面で中国への圧力を強めている米国をはじめとする西側諸国に対し、中国は強いという印象を与える必要がある」と述べた。

新型コロナ流行で米中関係はさらに悪化している。トランプ政権は中国の感染拡大に関する情報開示の不備を批判し、中国の国家安全省は最近の内部報告書で、コロナ流行を受けて中国が直面する敵意の高まりは、米国との関係を武力衝突に発展させる可能性があると警告した。

北京師範大学の政府管理研究院院長、唐任伍氏は「政府が他の予算を削減することになっても、国防費だけは削減しないだろう」と述べた。

国防省はコメントの求めに応じていない。

中国が公表する国防費は大まかな額で、内訳はない。外交関係者や専門家は、実際の国防費は公表額を上回っていると考える。

中国が昨年3月の全人代で発表した国防費は1兆1900億元(1675億2000万ドル)で、米国の昨年の国防費(6860億ドル)の4分の1程度にとどまった。

中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報の胡錫進編集長は18日、対話アプリ「微信(ウィーチャット)」への投稿で、国防費は増えると予想。「米国が耐え難い負担を理由に衝動的な行動を起こさないよう、中国は抑止力として一段の軍事力が必要だ」と論じた。

[北京 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・「新型ウイルスは実験室で生まれた可能性もある」とする論文が登場
・韓国政府、「K防疫」の成果を発信する最中に集団感染が再発
・トヨタ、国内工場は6月も生産調整 工場稼働状況まとめ
・緊急事態宣言、全国39県で解除 東京など8都道府県も可能なら21日に解除=安倍首相


20200526issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月26日号(5月19日発売)は「コロナ特効薬を探せ」特集。世界で30万人の命を奪った新型コロナウイルス。この闘いを制する治療薬とワクチン開発の最前線をルポ。 PLUS レムデジビル、アビガン、カレトラ......コロナに効く既存薬は?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、プーチン・ロシア大統領の訪問で準備=通信社

ビジネス

中国発の格安ネット通販、90日間の関税猶予中に米在

ワールド

米下院共和党、気候変動対策費を大幅削減へ トランプ

ワールド

スターマー英首相私邸で不審火、建物一部損傷 ロンド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 10
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中