最新記事

中国

休業補償、中国の場合

2020年5月1日(金)13時24分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新型コロナウイルス肺炎で緊急事態宣言下の東京 Issei Kato-REUTERS

安倍政権は80%の外出自粛を呼びかけながら休業補償と抱き合わせではないため多くの日本国民を苦しめている。コロナ感染拡大から抜け出した中国では、企業活動停止指示に伴い、どのような補償をしたのかを考察する。

封鎖翌日(1月24日)に発布した休業補償通知

中国では1月23日に武漢閉鎖を断行し、武漢以外の湖北省の各都市や他の少なからぬ地区に対しても移動制限や企業活動の停止あるいは外出禁止などに踏み切っている(医療支援物資製造や生活インフラを確保する国有企業は特殊条件下でフル稼働したことは『FISCO 株・企業報 Vol.9』の特集記事「新型コロナウイルスとデジタル人民元の野望」で詳述した)。

そのようなことをすれば、生活できない人が急激するわけで、いくら一党支配といえども人民の不満は爆発するはずだ。コロナ脱出など成功するはずがない。

ならば中国ではどのような休業補償を実行したのかを考察してみることにした。

すると、以下のようなことが分かった。

まず、武漢封鎖をしたその翌日である今年1月24日に、中国政府はコロナ防疫期間における「労働関係問題に関する通知」を発布している。

大雑把にざっくり言うと、「コロナの影響で経営困難をきたす企業に関しては、従業員を解雇しない限り、企業に対して就業安定補助金を給付する」というもので、したがって「企業は従業員に対して、これまで通り給料を給付せよ」というのが基本である。企業の損失分を国が一部補填することになっている。

但し、休業時間が給付周期内(月給制なら一ヵ月以内)であるならば、そのまま従来通り給付し、それを超える場合には「もし労働者が労働を提供している場合は、企業が最低賃金以上の給料を支払い、もし労働者が労働を提供していない場合は、企業が各行政区の規定に従って、生活費を支払うべき」など、さまざまな付帯条件が付いている。

2月5日に追加の通知

2月5日になると中国政府は「防疫期間の就業活動を円滑にすることに関する通知」を発表した。

これは主として農民工や中小あるいは零細企業の従業および就職活動を控えた大学卒業生などを対象とした通知だが、その中で「工業企業結構調整資金」を就業安定補助金や生活費に充てることができるという指示もしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中